2023 Fiscal Year Annual Research Report
プロサイモシンα由来ペプチドによるシスプラチン誘発性腎障害の新規予防法開発
Project/Area Number |
20K17287
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鳥越 健太 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (90867532)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 急性腎障害 / 抗がん剤 / プロサイモシンα |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は核内タンパク質であるプロサイモシンα由来ペプチド(P6Q)が急性腎障害(AKI)を予防し得るか、またその機序を解明することを目的としている。シスプラチン(Cis)投与による薬剤性AKIモデルを使用し検討を行った。8週齢の雄Wistarラットを用い、Cis(30mg/kg)を腹腔内に投与し、投与5日目にピークを迎えるAKIを発症させた。Cis投与30分前にP6Q(30mg/kg)を静脈内に投与し腎障害の抑制効果を検討した。P6Q投与により、Cis投与に伴う血清クレアチニンの上昇が抑制され、腎の組織学的障害度スコアも抑制された。また尿細管のTUNEL陽性アポトーシス細胞数も減少した。この機序について、プロサイモシンαで報告されているAktリン酸化による抗アポトーシス効果に着目して検討を行った。Cisは腎組織におけるアポトーシスの共通経路であるcaspase-3の発現及びミトコンドリア経路に関連するcaspase-9の発現を亢進させたが、P6Q投与によりこれらは抑制された。さらに、腎組織におけるAktリン酸化はCis投与だけでも亢進したが、P6Q投与によりさらに発現が増強されることが確認された。以上の結果より、P6QはCisによるミトコンドリア経路のアポトーシスをAktリン酸化の増強によって抑制することでAKIを抑制することが明らかとなった。さらに、P6Qの腎保護効果が腎障害の慢性化予防につながるか検討するために、Cis投与後の腎障害のピーク後の経過を確認した。Cis投与5日目にピークを迎えた腎障害は、投与14日目では改善傾向となり、P6Qの投与の有無にかかわらず効果に差は見られず、長期的な効果に関しては確認できなかった。最終年度には近年P6Qと関連が報告されているMMP-9、MMP-2への影響を検討したが、今回のモデルではP6Qによる影響は確認できなかった。
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