2021 Fiscal Year Research-status Report
ファーストメッセンジャーとしてのリンとその感知機構の解明
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20K17301
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
高士 祐一 福岡大学, 医学部, 講師 (50803524)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リン / 線維芽細胞増殖因子受容体1 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでの研究の中で、リンがファーストメッセンジャーとして作用し、特に骨においては線維芽細胞増殖因子受容体1(fibroblast growth factor receptor 1: FGFR1)がリン感知受容体として機能しているとの着想に至った。本研究では、リンによるFGFR1活性化の分子基盤を解明することを目的とした。昨年までに、Ⅲ型ナトリウム-リン共輸送体(PiT1)によるリンの細胞内への取り込みの関与について明らかとした。当該年度は、PiT1を介して細胞内に取り込まれたリンが、どのような機序を介して、細胞内からFGFR1を活性化するのかをさらに解明することを目指した。そこで、標識としてGFPを付加したFGFR1を用いて、GFP-Trap法からLC-MS/MS解析に持ち込む研究計画を遂行した。まず、FGFR1のC末端にGFPを付加したFGFR1の発現ベクターを作製した。本ベクターをリポフェクタミン法により骨芽細胞様細胞株であるUMR106に過剰発現させ、蛍光顕微鏡で観察した。結果、GFPの蛍光は確認できたものの、FGFR1の本来の局在である細胞膜上ではなく、細胞質中にドット状に観察された。過剰発現の系では、GFP付加FGFR1蛋白の小胞体ないしゴルジ体から細胞膜への移送に問題が生じているものと考えられた。そこで、GFP付加FGFR1を細胞膜に発現させるために、安定発現細胞株を得ることとした。合計6クローン樹立し、うち2クローンにおいて、GFPの蛍光が細胞膜上に観察された。本細胞の細胞外リン濃度を1 mMから5 mMまで上昇させたところ、リン応答性のERKのリン酸化が認められた。今回作出したGFP付加FGFR1安定発現UMR106細胞が、PiT1を介したリンの細胞内への取り込みとFGFR1のリン酸化を媒介する未知の因子を同定するためのツールとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度、GFP付加FGFR1安定発現UMR106細胞の作出に成功した。GFPがFGFR1の本来の局在である細胞膜で観察された。次いで、GFP-Trap法を用いたLC-MS/MS解析を予定しているが、GFP付加FGFR1安定発現UMR106細胞から細胞膜分画の蛋白を抽出する条件検討に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に作出に成功したGFP付加FGFR1安定発現UMR106細胞を用いて、GFP-Trap法からLC-MS/MS解析へと持ち込むべく、同細胞の細胞膜分画の蛋白を効率よく抽出するための条件検討を引き続き施行していく。本課題を克服し、PiT1を介したリンの細胞内への取り込みとFGFR1のリン酸化を媒介する未知の因子を同定を目指し、引き続き研究を遂行していく。
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