2020 Fiscal Year Research-status Report
皮膚移植片対宿主病におけるランゲルハンス細胞の免疫抑制機構の解明
Project/Area Number |
20K17307
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久保田 典子 筑波大学, 附属病院, 病院助教 (10844847)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ランゲルハンス細胞 / 移植片対宿主病 / 自己免疫疾患 / CD8 T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、ランゲルハンス細胞(LC)のみ除去下で、移植片対宿主病(GVHD)様皮膚症状が促進されるかを観察するため、表皮角化細胞特異的に卵白アルブミン(OVA)遺伝子を導入したK14-mOVA Tgマウスと、Langerinプロモーター下にジフテリア毒素受容体(DTR)が導入されたマウス(Langerin-DTR Tgマウス)を交配しdouble Tgマウスを作成した。そのマウスに放射線を照射し、K14-mOVA Tgマウスの骨髄細胞を移植して、放射線抵抗性のLCにのみDTRを発現させ、DT投与でLCのみを除去した後にGFP+OVA特異的CD8 T細胞(OT-I細胞)を移入したところ、LCが存在する群と比較しLC除去群でGVHD様皮膚粘膜症状が悪化した。また、病理組織学的にLC除去群で、皮膚に浸潤したGFP+OT-I細胞数が多く、耳介皮膚切片をコラゲナーゼ処理し皮膚の細胞を分離したサンプルをAnnexin V-7AADでフローサイトメトリー解析したことろ、LC除去群で皮膚組織OT-I細胞中のアポトーシス細胞の割合が少なかった。 次に、同種異系骨髄移植誘導性GVHDでのLCの役割を解明するため、DTを投与しLCを除去したC57BL/6バックグラウンドLangerin-DTR Tgマウスに、放射線照射後、同種異系野生型BALBcマウスの骨髄細胞を移入してGVHDを惹起させた。この実験でも、LC除去群で皮膚GVHDが悪化した。 本解析により、皮膚常在LCが表皮特異的自己反応性CD8 T細胞の増殖を、一部アポトーシス誘導を介して抑制することでGVHD皮膚症状の進展を抑制していることが示せた。申請者はここまでの研究を論文にまとめ、受理された。本研究はGVHDのみならず、interface dermatitisを呈する皮膚疾患の一群におけるLCの機能解明の一助となると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者が所属する研究室では、表皮角化細胞特異的に卵白アルブミン(OVA)遺伝子を導入したkeratin 14 promoter-membrane ovalbumin transgenic(K14-mOVA Tg)マウス(米国国立衛生研究所Stephen I Katz博士より譲渡)を所持しており、Langerinプロモーター下にジフテリア毒素受容体(DTR)が組み込まれたLangerin-DTRマウスも所持していた。さらに申請者のこれまでの研究で、K14-mOVA TgマウスにOVA特異的CD8 T細胞(OT-I細胞)を移入してGVHD様皮膚粘膜症状を発現させるプロトコールを確立し、手技も十分に習得していたため、K14-mOVA Tgマウスを用いた実験系においては、比較的スムーズに研究を進めることができたと考える。 また、骨髄移植を必要な実験においては、申請者は初めて行う手技であったが、過去文献を参考に、移植に必要な骨髄細胞数や、骨髄細胞と共に移植するT細胞数を何パターンか設定し、プレ実験を行うことで、GVHD皮膚症状を起こすのに最適な移入細胞数を決めて行うことができた。放射線照射においても、申請者が所属する筑波大学附属病院では、当施設内の生命科学動物資源センター(高橋 智センター長)を使用することができ、放射線照射機器を借用するとともに、筑波大学内の使用経験者より、その使用方法、照射線量の設定などを教示頂くことができた。 また、申請者は筑波大学附属病院に所属し、臨床も行っている立場であるが、使用マウスの管理において、生命科学動物資源センターや皮膚科学教室に所属する後輩の協力を得られている。実験においても、皮膚科学教室に所属する後輩の協力や、大学院在籍時の指導教官から引き続き助言や、協力を頂いて、限りある時間を有効活用しながら、道筋を立てて計画的に研究を行なえている。
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Strategy for Future Research Activity |
皮膚常在LCがGVHDにおける皮膚症状の進展に抑制的に作用していたという、申請者のこれまでの実験結果をふまえ、先に提出した研究計画書に沿い、皮膚常在LCのGVHD皮膚症状における抑制機構にB7ファミリー分子であるPD-L1やPD-L2が関与しているか否かを解析する実験を進める。申請者所属の研究室では、Crisper-Cas9システムを用いたPD-L1-Loxp、PD-L2-Loxpマウスを作出済みであり、昨年よりLC特異的にcreを発現するLangerin-creマウスとPD-L1-LoxpマウスをK14-mOVA Tgマウスとを交配させ、triple Tgマウスを作製した。 これは、角化細胞特異的にOVAを発現している上に、LC特異的にPD-L1が欠損したコンジェニタルノックアウトマウスであり、このマウスへOT-I細胞を移入し、GVHD様皮膚粘膜症状惹起を行い、皮膚粘膜症状をskin scoreを付けて観察してゆく。また、PD-L2-Loxpマウスも交配させtriple Tgマウスを作製し、PD-L1-Loxpマウスと同様の実験を進めていく予定である。上記に計画する実験は、申請者がこれまでに施行し成果を得ているGVHD様皮膚粘膜症状誘導モデルマウスを用いたものであり、既にプロトコールも確立し、手技的にも慣れたものであるため、スムーズな進捗が期待できる。 申請者は筑波大学附属病院に所属し、本年度も臨床も行っていく立場であるが、昨年度と同様に使用マウスの管理や、実験をするあたり、生命科学動物資源センターや皮膚科学教室に所属する後輩にも協力を頂きながら、臨床と並行してうまく時間を活用し、効率的に研究を進めていく予定である。また引き続き、大学院在籍時の指導教官から助言や、協力を頂いて、論文作成にも意欲的に取り組む。
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