2020 Fiscal Year Research-status Report
制御性T細胞・Th17細胞バランスの制御による強皮症の線維化治療
Project/Area Number |
20K17308
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
関口 明子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60774396)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 全身性強皮症 / 寄生虫 / 制御性T細胞 / Th17細胞 / 皮膚線維化 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性強皮症(SSc)は、免疫異常を基盤として、皮膚および内臓臓器の線維化、血管異常を呈する全身性自己免疫性疾患である。その機序はいまだ明らかにされておらず、有効な治療法がない。近年、強皮症では「Th17細胞が増加・活性化し、制御性T細胞(Treg)が抑制されている」と推測されているが十分に解明されていない。また、Th17/IL-17Aの増加が強皮症の皮膚硬化に関与することも報告されているが、強皮症の病態におけるTregの役割については解明されていない。そこで、本研究では、強皮症の皮膚線維化の病態におけるTh17細胞とTregの役割(バランス異常)を解明することを目的とする。 蠕虫は、線状の形態をとる寄生虫の一種であり、Tregを活性化し、様々な自己免疫疾患の動物モデルの症状を抑制することが知られている。 我々は、蠕虫を事前に感染することで、その後ブレオマイシンにより誘発されるマウスの皮膚線維化が有意に抑制されることを確認した。また、病変皮膚におけるαSMA+筋線維芽細胞とCD68+マクロファージの数は、蠕虫感染により有意に減少した。リンパ節をフローサイトメトリーで解析すると、蠕虫感染マウスではCD4+foxp3+ Treg細胞が増加し、Th17細胞が減少した。さらに、Tregを枯渇させると、蠕虫感染によるブレオマイシン誘発皮膚線維化の抑制が逆転し、Th17細胞が増加した。 本研究の結果から、蠕虫感染によるTreg細胞とTh17細胞のバランスを調整することで、SSc患者の強皮症治療に応用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全身性強皮症における皮膚線維化に対して、本研究において我々はすでに蠕虫感染が抑制的効果を発揮することを明らかにした。その機序として、制御性T細胞の増加と、Th17細胞の減少が関与している可能性が示唆された。現在、蠕虫感染によるこれらの免疫細胞の変化が腸内細菌叢の変化に関与するものである可能性を想定し、すでに我々は強皮症モデルマウス及び強皮症患者の便を採取し、腸内細菌叢の分析を開始している。当初の研究計画の大部分が既に遂行済であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
蠕虫を感染させたブレオマシン誘導皮膚線維化マウス及び、強皮症患者の腸内細菌叢の変化について解析している。蠕虫(Hp)は、マウスの消化管に寄生して腸内細菌叢を変化させる。そこで、蠕虫感染による皮膚線維化抑制作用における腸内細菌叢の変化、役割についても検討を行っている。腸内細菌のうち、制御性T細胞を活性化させる細菌叢が、蠕虫感染によって腸管内で増加しているかどうか調べる。びまん皮膚硬化型の全身性強皮症患者の便について腸内細菌叢の解析を行い、健常人と比較検討を進めている。腸内細菌叢の解析(次世代シークエンスを用いたメタゲノム解析:16s rRNAをコードするDNAを対象)は、理化学研究所生命医科学研究センター 粘膜システム研究チームの大野博司 先生との共同研究によって行っており、新たな成果が得られつつある。得られた成果をまとめて報告する。
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Causes of Carryover |
研究内容は順調に遂行中で、有益な結果を得ることができている。
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