2021 Fiscal Year Research-status Report
硬化性萎縮性苔癬における細胞外基質への免疫異常を発端とした新たな癌化機構の解明
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20K17313
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
宇都宮 夏子 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (50792090)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 硬化性苔癬 / 皮膚基底膜 / 細胞外基質 / ECM1 / 疾患感受性遺伝子 / 二次性発癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
硬化性苔癬は病理組織学的に液状変性、真皮上層の膠原線維の均質化を認める。この特徴的な所見に普遍性があることから、表皮-真皮境界部の基底膜における変化が本症の病態形成に関与している可能性を模索している。患者の病変部皮膚を用いて、様々な基底膜含有抗原に対する特異的抗体で免疫染色とレーザー共焦点顕微鏡での観察を行った。
基底膜における4型および7型コラーゲン、ラミニン332の発現様式に断裂や肥厚が認められた。さらに、真皮血管壁の4型コラーゲンの染色性に膨化や2重化がみられた。これらの結果は、硬化性苔癬の皮疹部には恒常的に発現する基底膜抗原の構造的な脆弱性と機能異常が関与していることを示唆するものとなった。本症の血清中には抗ECM1抗体が存在することが指摘されているが、7型コラーゲンとECM1タンパク自体が直接in vitroで結合することを抗原特異的なELISA法で確認した。
さらにin vitroで ECM1の細胞生物学的な機能を検討すべく、ECM1分子をsiRNA法でノック ダウンしたヒト線維芽細胞を作成した。この細胞をcDNA マイクロアレイで解析したところ 、基底膜抗原の他に上皮-間葉転換関連分子の発現レべルに変化が認められた。現在、硬化性苔癬の病変部皮膚から抽出したcDNAをマイクロアレイで解析し、ECM1ノックダウン細胞と比較することで、線維芽細胞特異的な線維化機構や癌化のメカニズムに関わる「病態感受性遺伝子群」を 絞り込む作業中である。これと並行して、生体内のECM1機能異常に連鎖した疾患感受性遺伝子の同定にも近々着手する予定である。得られた結果をもとに、疾患モデルマウスの作成へとつなげていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトの皮膚検体試料を用いているが、コロナ渦の影響もあって新規患者の受診が少なく、母集団が増加しない問題点がある。また、研究室が過密になる状況を避けるために、他の研究者たちとの使用時間を調整しなくてはならないため、長時間の観察やプロセスが必須な実験が滞っていることが影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の状況に影響されない研究環境を構築すべく、今後はin vitroでの検討(ECM1ノックダウンしたヒト線維芽細胞を用いた実験系)を主体にして効率よく進める予定である。
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