2020 Fiscal Year Research-status Report
皮膚自然免疫における間葉系細胞のCCL2-CCR2経路を介した制御機構解析
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20K17317
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渋谷 倫太郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (30823059)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 刺激性皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
SDSを塗布した皮膚の炎症を評価する指標を確立するために、炎症時に皮膚に浸潤する細胞のうち、どの細胞が重要なエフェクター細胞であるかを検証した。Gr-1陽性細胞である好中球、単球、好酸球を抗Gr-1抗体により除去したところ、SDSによる耳介腫脹や表皮肥厚は減弱した。さらに、抗Ly6G抗体により好中球を特異的に除去することでもSDSによる耳介腫脹や表皮肥厚は減弱した。この結果より、SDS皮膚炎においては好中球浸潤が重要な役割を果たすことが示唆された。 CCL2欠損マウスならびにCCR2欠損マウスにおいて、SDS塗布による耳介腫脹や表皮厚、そして皮膚に浸潤する好中球浸潤が減弱することを確認した。さらに、CCL2中和抗体を皮膚局所へ投与することでも、SDS皮膚炎、好中球浸潤は減弱した。これらのことから、SDS皮膚炎ならびにそれに重要な役割を果たす好中球の皮膚浸潤には皮膚局所におけるCCL2-CCR2経路が重要であることを見出した。 CCR2欠損マウスへ野生型マウス骨髄を移植したキメラマウスでは、SDS塗布による耳介腫脹、表皮厚、角質水分保持量、そして皮膚への炎症細胞浸潤(好中球、単球、好酸球)の減弱を認めた。さらに、皮膚におけるCCR2発現細胞が重要であるのかを確かめるため、野生型マウスとCCR2欠損マウスを外科的に結合するパラバイオーシス実験を行った。その結果、CCR2欠損マウスにおいてSDS皮膚炎の減弱を認めた。これらの結果より、皮膚に存在する放射線耐性細胞におけるCCR2が重要であることが示唆された。皮膚における放射線耐性細胞におけるCCR2発現をフローサイトメトリーで検証したところ、線維芽細胞や血管内皮細胞においては発現が確認されず、一部のT細胞、マクロファージでのみ発現を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SDS塗布による皮膚炎では、どのような細胞浸潤が重要なのか、あるいはどのような炎症性メディエーターが重要なのかが不明である。しかし、CCL2-CCR2経路のSDS皮膚炎への関与を評価する上で、上記の問いに答える必要があったため、本年度は重要なエフェクター細胞として高中有が重要であることを示すために時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の仮説に反して、フローサイトメトリーでは線維芽細胞や血管内皮細胞においてはCCR2発現が確認できなかったことから、ターゲットを修正する必要が生じた。現時点では、T細胞あるいはマクロファージの一部でのみCCR2発現を確認していることから、これらの細胞のSDS皮膚炎における役割を抗CSF1受容体中和抗体(マクロファージ除去)やT細胞欠損マウスで検証する予定としている。同時に、これらの細胞特異的なCCR2欠損マウスの作製をすすめる。 また、今回の成果として皮膚局所で産生されるCCL2がSDS皮膚炎に重要であることを確認したため、CCL2の産生細胞としてどれが重要であるかを、細胞特異的CCL2欠損マウスを作製する。
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Causes of Carryover |
COVID19により海外出張費用が使用されなかったため。次年度のマウス購入費用に充当する計画としている。
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