2020 Fiscal Year Research-status Report
脂肪由来幹細胞の自家移植による乾癬の根治的治療法の開発
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20K17318
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
荻野 龍平 島根大学, 医学部, 研究員 (00816035)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂肪由来幹細胞 / 肥満 / 乾癬 / TGF-β |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪由来幹細胞 (ASC) による乾癬の治療法の確立、そして肥満とASCの機能変化、乾癬との関連を明らかにするため、2020年度はマウスに対し高脂肪食を15週間摂取させ、肥満モデルマウスを作成した。この肥満モデルマウスは、通常食摂取マウスに比べて、体重、血中コレステロール、体重当たりの鼠径部皮下脂肪・精巣上体脂肪の重量、脂肪滴のサイズが有意差をもって増大することを確認した。また、肥満モデルマウスの脂肪組織においては、液性因子の一種であるTGF-βの量が大きく増大していることが判明した。現在は、肥満モデルマウスと通常食摂取マウスの両方から、ASCを回収し、その培養を行っている。 またASCの利用法として、二次性リンパ浮腫、リンパ管再生に対する効果も検証した。二次性リンパ浮腫は乳がんなど悪性腫瘍の治療としてのリンパ節郭清や放射線療法により生じることがある。このような場合、本来はリンパ管・リンパ節を通じて回収されるはずであった体液が四肢に貯留して浮腫を生じ、動きの制限や痛み、そして整容面にも大きな問題が生じる。リンパ浮腫に対する治療は弾性ストッキングの着用や徒手リンパドレナージ、リンパ管静脈吻合術などが行われてきたが、効果が乏しい場合もあり、近年になって再生医療的手法としてASCの移植が行われ、注目が集まっていた。 放射線照射と外科的なリンパ管切離により作成した、二次性リンパ浮腫モデルマウスに対してASCを移植したところ、移植を行わないマウスに比べて、リンパ管数の増大と、早期の浮腫解消がみられることを確認した。また電子顕微鏡による観察結果から、このリンパ管数の増大は既存の分裂により起こることを予想した。これらの成果をInternational Journal of Molecular Scienceに投稿し受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は肥満モデルマウスにおける体重の増加や脂肪滴サイズの増大等確認することができたが、多くの論文にて報告されている炎症性サイトカイン変化の中で、確認できなかったものもある。そのため、肥満モデルが正しく作成されているか、確認する必要が生じている。 また、研究棟の改修に伴う研究室の移転に加え、自身の所属機関変更もあり脂肪由来幹細胞の培養を継続的に行えない時期が発生し、当初の予定に比べ進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は脂肪由来幹細胞を必要とする数まで培養し、肥満モデルマウス由来のものと、通常食摂取マウス由来のもので、その治療効果に違いが生じるかをイミキモド塗布により作成する乾癬モデルマウスを用いて検証する。 また、由来が異なる脂肪由来幹細胞について、TGF-βをはじめとする炎症性サイトカイン発現量を測定し、それらの変化と治療効果の違いとの関連を検討する。 所属機関の変更に伴い、実験施設の利用に関する研修や動物実験計画の再申請等が必要になるが、課題の遂行には大きな影響を及ぼさないものと考えている。
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Causes of Carryover |
自身の所属機関が変更となるため、再度の購入が必要となる消耗品等の購入にあてるために翌年度分として繰り越すこととした。 これらの助成金は翌年度のものと合わせて、主に試薬・器具等の購入費として使用し、研究計画が滞りなく進行するように努める。
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Research Products
(2 results)