2020 Fiscal Year Research-status Report
汗アレルギーにおける抗原感作経路とIgE産生機序の解明
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20K17319
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石井 香 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (90448267)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 汗抗原 / MGL_1304 / アトピー性皮膚炎 / コリン性蕁麻疹 / ランゲルハンス細胞 / 真皮樹状細胞 / 経皮感作 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くのアトピー性皮膚炎患者やコリン性蕁麻疹患者では汗抗原(MGL_1304)に対する特異的IgEが検出されており、またこれらの患者は真皮内タイトジャンションの不良により汗管から真皮内に汗が漏出することが報告されている。これらの事象を元に表皮および真皮での局所における抗原感作の機序の違いがあることを推測した。これらをvivoで再現する方法として、ヘアレスマウス(HR-1)を用いて汗抗原(MGL_1304)を表皮内および真皮内へ投与する方法を検討した。 当初はマイクロニードルを用いた抗原投与を検討していたが最終的には、表皮内投与は皮膚ストリッピングを施行後、抗原を染み込ませたパッチを貼付する方法を採用し、真皮内投与には34ゲージの極細針と真皮内に到達可能な自作アダプターを用いる方法を採用した。 これらの投与方法の検討により表皮内と真皮内の抗原の打ち分けが可能となり、それぞれに存在する抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞(L C)と真皮樹状細胞(Dermal DC)による免疫反応の比較検討が可能となった。 現在、汗抗原やOVAの真皮内投与のパイロットスタディを行い、抗原投与前後での血清中に存在する特異的IgEやIgGをELISAで測定・解析中である。また汗そのもののアジュバント効果の可能性も検討項目に付加しながら、今後はマウスのN数を増やし統計的な傾向を検討し特異的抗体の獲得機序を解明していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヘアレスマウス(HR-1)を用いた汗抗原(MGL_1304)の表皮および真皮内投与の方法の検討であるが、投与に用いる機材として想定していたマイクロニードルは、当初作製を打診していた凸版印刷(株)より製造が難しいとの連絡を受け、次の候補であったコスメディ製薬株式会社が製造し販売しているマイクロニードルを使用して抗原投与の検討を行なった。具体的には、マイクロニードルは直径1cmの円盤に長さ600μmの針が200本立っている形状で、まずマイクロニードルをアプリケーターで皮膚に打ち込み、ニードルを抜いた後に抗原塗布する方法を用いた。皮膚片には真皮内投与が可能であったが、実際の生体では皮膚の修復が早く、抗原が真皮内に到達しなかった為、抗原投与の方法をマイクロニードル法からマイクロシリンジを用いた方法に切り替え、34ゲージの極細針を用いて真皮内に到達する為のアダプターなどを自前で試作しながら投与を検討した。 表皮内投与は、皮膚ストリッピングを施行後、抗原を染み込ませたパッチを貼付する方法を検討した。 抗原投与の方法に昨年まで時間を費やした為、汗抗原等の真皮内投与のパイロットスタディは2021年に入ってから行い、現在、抗原投与前後のマウス血清中の特異的抗体(IgE, IgG)をELISAで検討中だが、まだ真皮内投与での有意な感作が得られていない。引き続き投与抗原量や免疫スケジュールなどを検討中。また本研究と類似の研究が既に報告されており(T. Yasuda et al. PLOS ONE | DOI: 10.1371, 2016)、それとの差別化を図るために汗そのもののアジュバント効果も検討中である。 表皮と真皮のタイトジャンクションを形成しているClaudin-1とClaudin-3のKOマウスの作製は難航しているが、今後はゲノム編集によるKOマウスの作製へシフトする。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘアレスマウス(HR-1)を用いた汗抗原(MGL_1304)の表皮および真皮内投与による免疫反応の比較検討は、引き続きN数を増やして血清中の特異的IgEおよびIgGをELISAで測定しながらそれぞれの傾向を検討し特異的抗体の獲得機序を解明していく。また汗そのものに有意なアジュバント効果の可能性の有無を想定しながら検討項目に加えていく予定。 表皮と真皮のタイトジャンクションを形成しているClaudin-1とClaudin-3のKOマウスの作製は当大学の免疫学講座の保田教授らのゲノム編集による簡便なKOマウスの作製が研究室で始動しているので、今後はその技術協力を得てKOマウスの作製を行っていく。 ヒト末梢血を用いたin vitroでの汗アレルギー誘導の検討は、当研究室でヒト末梢血を使用したLC/DCの分化誘導やT細胞との共培養の実験系が立ち上がっているので、それに汗抗原感作の項目を追加する形で実験を遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
実験手技の検討が予想外に時間を要し当初の実験計画より遅れが生じた為。最終年度にずれ込んだ実験で使用予定である。
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