2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of the diagnostic system for the prognosis of severe alopecia areata integrating imaging and immunological analysis
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20K17328
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
木下 美咲 杏林大学, 医学部, 学内講師 (40594594)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 円形脱毛症 / トリコスコピー / ステロイドパルス療法 / 免疫学的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ステロイドパルス療法(パルス)を施行した重症円形脱毛症患者を反応良好群(治療1年後に70%以上の再発毛を達成)と反応不良群(再発毛が70%未満)に分類し、そのうち必要なデータが得られた患者10例(反応良好群5例:反応不良群5例)を対象に下記の解析を行った。 ①画像診断 パルス直前およびパルス後3・6か月後のトリコスコピー所見を解析した。代表的所見である黄色毛、断裂毛、黒色点、漸減毛、新生毛につき上記の各時期での頻度を評価したところ、2群間で明らかな差はなかったが、所見の微細な形状・特徴が異なる傾向にあった。例えば黄色点について、毛孔の明らかな開大を伴う黄色点(開大黄色点)、毛孔の明らかな萎縮を伴う黄色点(萎縮黄色点)が存在し、パルス直前は2群とも開大黄色点が認められやすいのに対し、パルス後3~6か月の時点では反応良好群で開大~通常黄色点、反応不良群で萎縮黄色点が顕著となった。この結果は観察される所見の微細構造を評価することで、各所見の頻度に差がでない初期の段階でも予後の予測が可能となることを示唆する。今後さらに症例を蓄積し、統計学的な解析を加える。 ②免疫学的解析 パルス直前の頭皮生検検体を用い、毛周期(成長期・退行期・休止期毛の比率)、毛球部周囲の細胞浸潤の程度、好酸球浸潤の有無、毛球部細胞浸潤部の免疫染色(CD4, CD8, CD56, GranzymeB, CXCR3, FOXP3)の結果を2群間で比較したところ, 反応不良群では良好群に比してFOXP3の陽性頻度が高かった。さらに血清学的評価として上記10例につき順次、パルス直前、直後、翌日の血清中炎症性サイトカイン(IFNγ, IL2, IL6, IL10, IP10)を測定中であり、反応不良群で良好群に比し、IP10が高値となる傾向が確認されている。今後統計学的な有意性を検証するために症例を追加する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた①末梢血プロファイル、②組織プロファイル、③画像診断所見の各解析項目について、10名の患者で必要なデータの取得および一次解析を完了することができ、さらに残る100名以上の患者で③のうち、トリコスコピー画像解析を行うためのデータ取得が完了している。③のうちの超音波画像については、評価可能なデータを取得できたのが数名に限られており、今後症例を増やす必要があるが、トリコスコピー画像を当初予定していた症例数の倍以上の患者から取得できたことを考慮すると、計画は総じておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では2022年前期までに重症円形脱毛症患者の①末梢血プロファイル、②組織プロファイル、③画像診断所見について必要なデータを収集し中間解析を行うこと、2022年後期に各項目の相関を解析し最終的に病態・予後評価システムを構築することを目標としており、今後も上記3項目についてのデータを収集しつつ、随時中間解析を行っていく。具体的には末梢血プロファイルに必要となるパルス直前・直後、およびパルス後数か月ごとの患者の血清、組織プロファイルに必要となる頭部生検検体、画像診断としてトリコスコピーおよび超音波画像のデータを蓄積する。同時に中間解析として、各項目につき治療反応良好・不良群間での比較を行い統計学的に検証する。統計学的に有意差のある項目をできる限り多く抽出することで、最終的により精度の高い病態・予後評価システムを構築できる可能性があり、最新の知見と照らし合わせながら当初の計画になかった評価項目も追加する予定である。
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Causes of Carryover |
当初研究経費に組み込んでいたフローサイトメトリーおよび免疫染色に必要な試薬及び備品の一部につき、研究者らのグループが行う別の研究のために購入され余剰となっていたものを使用できたこと、データ管理のために購入予定であったワークステーションなどの設備備品につき、予定よりも安価な製品が販売され代用できたこと、すでに購入されていたものを使用することで購入の必要がなくなったことが主な原因として挙げられる。また参加を予定した学会のコロナ蔓延に伴う中止やWeb開催への変更により、学会参加費および交通費にも未使用分が生じた。次年度に繰り越された経費については、解析に組み込む症例数や評価項目を追加することで必要となる試薬、備品の購入や本研究の成果を発表する際の論文投稿費(オープンアクセスに伴う費用を含む)に充てる予定である。
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