2020 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎の炎症長期化にともなう血管機能変化の制御機構解明
Project/Area Number |
20K17333
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
関田 愛子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (10804289)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | アトピー性皮膚炎 / 血管機能 / 免疫細胞 / 炎症の慢性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー性皮膚炎(AD)は強いかゆみと紅斑、丘疹、苔癬などが組み合わさった多様な皮膚症状を特徴とする慢性難治性の皮膚炎である。特に症状が長期化した患者においては、外用薬治療により症状をある程度コントロールしながらも長年にわたり炎症を繰り返すことにより表皮肥厚と重度の苔癬化が見られる。このような皮膚組織の真皮では膠原線維、弾性線維、血管の構築が破綻すると同時に、免疫細胞の組織内浸潤および浸潤細胞が役目を終えたのちにマクロファージや好中球などにより除去される機構すなわちサイレントクリアランスに関連した血管の機能にも異常をきたしていることが示唆される。本研究では、ADの皮膚組織において炎症を繰り返すことにより引き起こされる血管の分子的変化を免疫細胞の組織内浸潤-クリアランスの制御と関連づけて解析する。また、この血管の変化がAD病態をさらに難治化している可能性に着目し、皮膚炎にともなう血管の機能的変化と病態慢性化の過程の解明を目指す。 当該年度は、AD患者における炎症長期化状態と血管機能に関連する因子のリンク解析の探索を行った。炎症状態についてはAD患者ごとに過去3~5年の電子カルテ上の皮疹スコアの推移および皮疹性状・病理学的性状を解析し、特に苔癬化の程度に基づき炎症長期化状態を評価した。これと同時に皮膚組織RNA-seqデータを用いて免疫細胞の組織内浸潤-クリアランスに関わる遺伝子、とりわけ血管内皮細胞やマクロファージに発現する遺伝子の発現解析を行い、これと皮膚炎症状態との関係性について検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AD患者の皮膚組織において、免疫細胞および血管内皮細胞に発現する血管外遊走・組織内浸潤に関わる遺伝子群とマクロファージ等による細胞貪食・クリアランスに関わる遺伝子群の発現量の関係性を調査したところ、炎症の長期化を示唆する強い苔癬化が見られる皮膚組織では前者が優位になる傾向があることを見出した。すなわち重度に炎症が慢性化した皮膚組織において免疫細胞浸潤―クリアランスのバランスが破綻している可能性を示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、AD患者ごとの炎症長期化状態および血管の分子的変化をより詳細に評価するために病理学的データと皮膚トランスクリプトームデータとのリンク解析を進める。また遺伝子改変AD様マウスモデルを用いて血管機能の制御に関わる分子機構に迫るとともに時系列データを解析することにより病態慢性化の機構の解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
初年度はコロナの影響により当初購入予定であった試薬等の購入を実行することができなかった。
|