2020 Fiscal Year Research-status Report
水疱性類天疱瘡においてDPP-4阻害薬が免疫寛容の破綻に及ぼす影響についての研究
Project/Area Number |
20K17334
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
泉 健太郎 北海道大学, 医学研究院, 助教 (50793668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水疱性類天疱瘡 / 自己免疫 / 自己抗体 / BP180 / DPP-4阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
水疱性類天疱瘡(BP)は、高齢者に好発する自己免疫性水疱症である。表皮真皮間接合を担うBP180の中でもBP180NC16a領域に対する自己抗体により水疱が生じることが広く知られている。近年、2型糖尿病治療薬であるDipeptidyl peptidase-IV阻害薬(DPP-4i)の投与に関連したBPの報告例が相次いでいることに加え、欧州を中心とした大規模な疫学研究により、DPP-4iの投与とBP発症の強い因果関係が証明されていることからDPP-4i関連BPに対する関心が高まっている。しかし、DPP-4iが自己免疫寛容の破綻にどのように作用するかは未だ全く不明である。本研究では、“なぜ特定の個体でBPが発症するのか?”というBP発症についての根幹をなす謎を解き明かすためにDPP-4iがBP180に対する免疫寛容の破綻とBP発症に関与していることに着目し、BP180ヒト化マウスを全長ヒトBP180リコンビナントタンパクにより免疫した後にDPP-4iを投与し、BP自己抗体の誘導と皮膚症状の惹起にどのような影響を及ぼすかを評価した。 BP180ヒト化マウスに対して全長BP180リコンビナントタンパクをTiterMaxとともに皮下投与することにより免疫を行うも、初回免疫後2週間後には明らかな皮膚病変は確認できなかった。初回免疫より2週間後に全長ヒトBP180リコンビナントタンパクによる追加免疫を施行したところ、初回免疫より4週間後には眼周囲の皮膚や耳に軽微な皮膚病変を呈するマウスを散見したが、vildagliptin投与群と非投与群の間で皮膚病変の発症率や皮膚病変の重症度において有意な差は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BP180ヒト化マウスを免疫するためのヒト全長BP180リコンビナントタンパクの大量精製が困難であると思われていたが、十分量のタンパクを精製することができ、実際に強制免疫、追加免疫を行うとともにDPP-4阻害薬であるvildagliptinの投与開始することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
DPP-4i関連BPではDPP-4i投与開始から1年以上を経過した後に水疱などの皮膚症状が生じてくるなど、通常の薬疹と比較し、長い潜伏期間を経てBP発症に至ることが少なくない。初回免疫後4週間の観察期間にてvildagliptin投与群・非投与群の皮膚症状の誘導率や重症度を比較し、明らかな有意差を認めなかったが、DPP-4i投与開始からBP発症まで長期間を要することを考慮し、現在、観察期間を延長し、皮膚症状の誘導率や重症度に差が生じるか否か評価を行っている。また2021年度はDPP-4i関連BPでは自己抗体エピトープが通常型BPと異なっていることが知られているため、NC16A ELISAや全長BP180ELISAなどを施行し、自己抗体エピトープの違いについても併せて今後検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、参加予定であった学会に参加することができなかった。またグローブ等一部の物品の納入が困難となったことがあり、次年度使用額が生じたものと考える。今年度は新型コロナワクチン接種に伴い、ハイブリッド開催の学会にて学会会場への参加が可能になることが予想されることやマウス実験の追試験等について使用することを計画している。
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