2020 Fiscal Year Research-status Report
乾癬により肝硬変を発症する免疫学的機序の検討と肝硬変治療への応用
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20K17355
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
井汲 今日子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (90833301)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乾癬 / 脂肪肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
乾癬は全身炎症疾患であり、乾癬の悪化は代謝疾患にも影響を及ぼす。2020年度は各種薬剤による乾癬治療の結果、糖代謝・脂質代謝を含む代謝に関わるデータがどのように変化するかの後ろ向き観察研究を行った。その結果、使用薬剤により糖代謝・脂質代謝への応答性が異なることがわかった。また、薬剤によっては有意に体重増加をみとめることもわかった。特に、アプレミラスト治療前後ではHbA1cには変化がないが、血清インスリン値が低下することを明らかにした。脂質プロファイルはアプレミラスト治療前後で変化がなかった。また、乾癬患者においては治療前の血清インスリン値が高くなっていることも明らかにした。さらに、皮膚臨床写真との比較により、代謝に影響する際には皮疹がフレアしている可能性を考えた。フレアさせない治療・および適切な乾癬治療が、代謝への悪影響を防ぐために重要であると思われた。 さらにイミキモド塗布による乾癬モデルマウスでの肝臓組織を組織学的に検討した。その結果モデルマウスでは激しい炎症細胞浸潤がみられるわけではないものの、ある種の細胞が増えていると思われ、形態学的にはマクロファージである可能性があった。マッソントリクローム染色ではコントロールとモデルマウスに差がなかったので、さらに細かい繊維である細網繊維にに違いがあるかを確認するために、鍍銀染色を予定している。浸潤細胞の詳細については免疫染色などを進めており現在検討中である。これらの結果からは、少なくとも乾癬において肝臓にも炎症をきたし、マクロファージが関わる可能性が示唆されたが、それがどのような種類のマクロファージであるのかをさらに調査する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は臨床データの集積およびその解析を主体として行ったため、モデルマウスに関する実験が遅れている。 乾癬モデルマウスの実験については、肝臓組織内にみられる細胞を様々な種類の染色を行ったり、条件設定を行うことに時間を要している。さらに、RNAシーケンスのセットアップに時間を要している。COVID19の影響もあり、当初予定していた時間を研究にあてることができなかったことも要因の一つではある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに脂肪肝と直結した患者データの統計解析を行い、マウス組織の染色を進めていく。 さらに、RNAシーケンスを行う。
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Causes of Carryover |
COVID19の影響により、学会等研究会が全てオンラインで開催されたため、交通費が発生しなかった。 また、今年度は臨床データの解析を主体として行っていたことに加え、基礎実験については既存の材料で可能な範囲内での実験であったため、費用が発生しなかった。 繰越額については、次年度以降、RNAシーケンスの際に使用する。
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