2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K17357
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
御守 里絵 奈良県立医科大学, 医学部, 特任助教 (20533722)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | EGFR阻害薬 / 薬疹 / 自然免疫応答 / 抗菌ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬は上皮性悪性腫瘍の治療に頻用される一方で、ざ瘡様皮疹などの皮膚症状を高率に生じることが知られている。EGFR阻害薬による薬疹の発症には皮膚自然免疫応答が密接に関与していると考えられるが、その詳細なメカニズムについては未だ不明な点が多い。 これまでにわれわれは、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌の培養上清による刺激で培養ケラチノサイトから産生される抗菌ペプチドβ-defensinの産生をEGFR阻害薬が抑制することを示し、さらにEGFR 阻害薬投与によりざ瘡様皮疹を生じた患者ではβ-defensin-1、-3が有意に減少することを見出した。 本研究では、上記背景に基づき、EGFR阻害薬がヒトの皮膚の自然免疫応答に及ぼす影響を検討することで、分子標的治療薬による皮膚障害の病態解明を目指している。 本年度は、ケラチノサイトの培養系を用いてEGFRリガンドがブドウ球菌刺激由来のβ-defensin産生へ及ぼす影響を検討した。まず初めにEGFRリガンドのEGF, HB-EGF, TGF-αによる刺激で培養ケラチノサイトからβ-defensinが産生されるかを調べた。これらのEGFRリガンド類刺激によりβ-defensin-3が産生されたため、次にブドウ球菌刺激によってEGFRリガンド類が誘導されるかを調べたところ、表皮ブドウ球菌刺激によってTGF-αが産生された。また、表皮ブドウ球菌とTGF-αによる同時刺激を行うと、表皮ブドウ球菌単独刺激時に比べ、β-defensin-3の著名な産生亢進が認められた。さらに、表皮ブドウ球菌刺激由来のβ-defensin-3の産生は、TGF-α中和抗体により抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGFR阻害薬投与患者皮膚における抗菌ペプチド産生についてさらに解析を進め、EGFR阻害薬によりβ-defensin産生が有意に減少し、この産生抑制は皮膚症状と相関することが判明した。さらに、ブドウ球菌刺激とEGFRシグナルがβ-defensinの産生にどのように関わっているのかの検討を行い、表皮ブドウ球菌刺激由来のβ-defensin-3産生においては、EGFRが必須のシグナルであると同時にその産生を増強させる作用があることが明らかになった。以上により、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、患者皮膚における抗菌ペプチド・表皮免疫関連分子の発現および皮膚細菌叢の構成菌種・菌量の網羅的解析、培養細胞を用いた抗菌ペプチド産生メカニズムの検討を進める。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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Research Products
(3 results)