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2021 Fiscal Year Research-status Report

免疫抑制作用薬がヒト汗腺に与える影響の解析:なぜステロイドは無汗症に有効なのか?

Research Project

Project/Area Number 20K17360
Research InstitutionKyorin University

Principal Investigator

下田 由莉江  杏林大学, 医学部, 助教 (50774204)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsヒト汗腺細胞 / 細胞培養 / 無汗症 / 画像解析
Outline of Annual Research Achievements

2021年もコロナ禍の影響をうけ良性腫瘍の切除時に生じる余剰皮膚検体数が限られたため、継続して昨年度確立したフィーダー細胞を用いたヒト汗腺細胞長期継代培養系を用いてヒト培養汗腺細胞の確保に努めた。本系で回収される細胞はフィーダー細胞の混入を免れないため、フィーダー細胞の除去をヒト線維芽細胞の細胞表面マーカーを用いて行うことを試みたが困難であった。そこで、前述の系と並行して異なるケラチノサイト培養培地とコラーゲンコートディッシュを用いた培養法の確立に努めた結果、3ラインのフィーダーフリー培養ヒト汗腺細胞を得ることに成功した。次いで、申請時の研究計画調書の記載に従い、得られたフィーダーフリーの培養ヒト汗腺細胞に副腎皮質ステロイド(以下ステロイド)を作用させ、アセチルコリンレセプター、アクアポリン5などの、いくつかの汗腺に関連する遺伝子の発現を、リアルタイムPCR法を用いて検討したところ、発現がステロイド添加により変化することが明らかとなった。そこで、より網羅的にヒト培養汗腺細胞に与えるステロイドの影響を解析するため、同じくフィーダーフリーの条件下でステロイド添加ある・なしでヒト汗腺細胞を培養しtotal RNAを回収しマイクロアレイを作成し遺伝子発現プロファイルを検討した。ステロイド添加にて、汗腺機能に関連するチャネル分子などの発現が亢進していることが明らかとなった。また、実臨床において無汗症罹患例でのステロイドの汗腺に対する作用を評価するにはミノール法などヨードデンプン反応を用いるが本法では定量的評価が困難である。培養系で得られた所見と臨床効果との相関を明確化するためにはステロイドの投与効果の定量的評価が重要となるため、培養細胞を用いた実験と並行して、デジタル画像解析技術を用いた治療効果の定量的判定法を開発した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究申請の目的はヒト汗腺細胞に与えるステロイドなど免疫抑制作用薬の直接的作用を培養ヒト汗腺細胞やそれを用いた立体培養系などを用いて評価することにある。昨年度、実験の遂行に必要なヒト汗腺細胞を比較的大量に培養する技術としてヒト線維芽細胞をフィーダーとした培養系を確立したが、ヒト汗腺細胞とフィーダー細胞の両方で発現する分子の区別が困難であった。そこで、線維芽細胞の細胞表面マーカーを用いてフィーダー細胞の分離を試みた。しかし、マイトマイシン処理の影響によるものかフローサイトメトリーによる解析では二つの細胞群を明確に分離することが困難であることが明らかとなった。そこで、ケラチノサイト初代培地とコラーゲンゲルを用いたフィーダーフリーの培養細胞系をもちいて培養汗腺細胞を得て、課題の主たる目標である薬剤の作用を評価するための方法論の確立を試みた。未だ、パイロットスタディの段階ではあるが、ステロイド添加により培養ヒト汗腺細胞の遺伝子発現に変化が生じることが明らかとなった。今後は異なるバッチの培養ヒト汗腺細胞を用いて同様の実験を遂行しバイオインフォマティクス解析を行う予定である。解析の準備としてステロイド添加後発現の増強する遺伝子群から汗腺関連のものを抽出し、gene ontology解析を開始している。また、本研究では最終的には実臨床でステロイドを投与した無汗症患者ではなぜ発汗が改善するのかを解明することにある。今後、網羅的遺伝子解析により同定された因子とステロイドの有効性の相関を明らかにするためには、培養細胞を用いた分泌実験などに加えて、臨床データに基づく治療効果と相関をみる必要があると考えられたため、臨床効果の定量的評価法の確立を試み、一定の方法論を得ることができた。

Strategy for Future Research Activity

これまで、ヒト汗腺細胞の特性を維持しながら安定して継代培養する技術が確立されていなかった。昨年度は、フィーダー細胞を用いて正常ヒト汗腺組織からの安定した細胞培養法を確立した。細胞の収量自体は良好であるものの、マーカー遺伝子発現の評価に基づく限り、その生物学的特性は培養操作中に変化しており、またフィーダー細胞の存在が評価を困難にしていることが示唆された。そのため、今年度はヒト汗腺細胞単独培養から回収した細胞を用いて、研究計画の本題である副腎皮質ステロイド添加により遺伝子発現が変化することをまずリアルタイムPCR法を用いて検証し、変化が検出可能であることを検証し、マイクロアレイを作成するに至った。現在、確立した手法を用いて解析サンプルを増やし、バイオインフォマティクス解析により、まずはステロイドが汗腺細胞に与える影響を評価したい。
その評価においては、汗腺の機能に関する分子に加えて、dermcidinやアセチルコリンレセプターなどの汗腺機能を反映する分子やMHC class I, MIF,α-MSH などの組織の免疫学的特権に関連する分子の発現変化も解析対象に加えていく予定である。また、計画調書の記載にあるように、今後、汗腺細胞の立体培養系を用いた同様の評価、他の免疫抑制剤が培養汗腺細胞に与える影響の解析を試みる。さらには、今年度確立した実臨床での薬剤の発汗機能への影響の評価法や細胞分泌能測定法など汗腺機能評価系と培養細胞系で得られたデータの相関解析を行い、発汗異常疾患における薬剤の奏功機序を明らかにしていく。また、これまで集積したフィーダー細胞を用いて培養した汗腺細胞を活用すべく、混入するフィーダー細胞と汗腺細胞の実用的な分離法の確立も試みる予定である。

Causes of Carryover

申請時の研究計画に準じて、汗腺細胞の特性を維持しうるよう培養系をさらに改良するためにフィーダー細胞、汗腺に作用させる薬剤の影響を評価するための、遺伝子解析やフローサイトメトリーによる解析を行い、各種抗体などを購入したため、概ね当初予定した通りの予算を使用した。しかし、依然としてコロナ禍の影響は大きく、感染症流行状況を考慮し、国際学会への参加を中止し、国内学会へのweb参加に留め、研究試料とデータの蓄積と解析を優先したため、学会参加費等の費用が抑えられたため若干の予算を余すこととなった。
次年度は、汗腺細胞の特性の変化や薬剤の影響を評価する実験系を行う予定であり、発生関連分子シグナル活性化因子など低分子化合物、組み換えタンパクなどの購入、マイクロアレイなどの購入が必要となる見込みである。
研究成果については、本年度後半頃から、国内・国際学会での発表、論文化を通して広く世界に発信するため、学会参加費や英文校正費等の使用が見込まれる。本年度の余剰はこれらの費用に充当する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2022 2021

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] ヒト汗腺細胞の長期培養法確立の試み2022

    • Author(s)
      福山雅大,下田由莉江,塚島明希,君島桃子,山﨑好美,大山学
    • Organizer
      第21回日本再生医療学会
  • [Presentation] Inflammatory type of acquired idiopathic generalized anhidrosis is characterized by dysregulation of sweat gland immune privilege2021

    • Author(s)
      Yurie Shimoda, Yoshimi Yamazaki, Yoshiko Mizukawa, Manabu Ohyama
    • Organizer
      The 46th Annual Meeting of the Japanese Societ for Investigative Dermatology

URL: 

Published: 2022-12-28  

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