2022 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制作用薬がヒト汗腺に与える影響の解析:なぜステロイドは無汗症に有効なのか?
Project/Area Number |
20K17360
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
下田 由莉江 杏林大学, 医学部, 助教 (50774204)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒト汗腺細胞 / 細胞培養 / 無汗症 / ステロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、免疫抑制作用薬がなぜ無汗症など発汗障害に奏効する機序を明らかにすることを目的としている。まず、薬剤添加がヒト汗腺細胞に与える影響を評価するための安定した培養系の確立を試みた。ヒト皮膚からマイクロセクション法で単離した汗腺をフィーダーフリーとヒト線維芽細胞をフィーダーとして用いた条件で培養したところ、両者で初代培養の確立できたが、後者の方が確立の効率が高く10継代の培養も可能であった。しかし、フィーダー細胞の除去が困難であった。そこで、ケラチノサイト培養培地とコラーゲンコートディッシュを用いて培養法の改良に努めた結果、複数のフィーダーフリー培養ヒト汗腺細胞株を得た。リアルタイムPCR法を用いた遺伝子発現解析では、汗腺のバイオマーカーであるaquaporin 5(AQP5)やcholinergic receptor muscarinic 3(CHRM3)は継代により発現低下したが、CEACAM5の発現は比較的保たれていた。得られたフィーダーフリー培養ヒト汗腺細胞に副腎皮質ステロイド(以下ステロイド)を作用させたところAQP5やCHRM3などの遺伝子発現がステロイド添加により変化した。さらにステロイド添加あり・なしそれぞれの条件のヒト汗腺培養細胞からマイクロアレイを作成し遺伝子発現プロファイルを検討した結果、ステロイド添加にてimmunophilinや汗腺機能に関連するケモカイン、チャネル分子などの発現が亢進することが明らかとなり免疫抑制作用薬がヒト汗腺に与える影響の一端を明らかにするこことができた。並行して、無汗症など発汗障害の病態の定量的把握のための発汗テスト、病理組織学的検査所見のデジタル画像解析技術を開発・改良し、免疫抑制作用薬がヒト汗腺細胞に与える影響という観点から培養細胞系で得られた所見を実臨床における所見に橋渡しするための一助となる技術的基盤を確立した。
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