2020 Fiscal Year Research-status Report
皮膚UV誘発がんに高頻度で変異が見つかるがん抑制遺伝子Ppp6cの解析
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20K17365
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
加藤 浩之 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 共同研究員 (90770347)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メラノーマ / マウス発がん実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱リン酸化酵素PP6は、触媒サブユニット(Ppp6c)と制御サブユニットからなるホロ酵素である。これまでの生化学的な解析から、PP6はがん抑制的に働くと考えられてきた。一方、ヒトがんゲノムプロジェクトにより、Ppp6cの変異が皮膚がんで多く認められることが報告された。特に、紫外線暴露によって生じたとされるメラノーマ組織の約15%で、Ppp6c遺伝子変異が認められる。このことは、PP6がヒトのメラノーマの原因遺伝子の1つであることが示唆される。しかし、これまで生体を用いてPP6がメラノーマ発症の原因になっているかどうかの証明はまだない。本研究の目的は、マウスを用いて、Ppp6cが、メラノーマの抑制遺伝子かどうかの証明である。申請者は、既にその目的のためのマウスの作製を計画した。先ず、メラノサイト特異的にBRAF(V600E)を発現させかつPpp6cアレルを欠損させることのできるマウスの作成に成功した。これまでに、背中の皮膚メラノサイト特異的に2重変異(Ppp6c欠損+変異型BRAF発現)を誘導して長期間観察するという実験を行ったが、腫瘍の発生は認められなかった。しかし、変異型BRAF発現に加えてPpp6cヘテロ欠損を持つマウスにUV照射を行うことにより、高頻度にメラノーマが発症することが明らかとなった。この事は、本メラノーマ発症実験においてUV照射が必須である事。また、Ppp6cヘテロ欠損がメラノーマ発症に有利に働くことを示唆した。本研究では、ほんぶ実験を継続し、メカニズムの解析を行い、メラノーマ治療開発のための基礎データを得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が持つPpp6cF/Fマウスと、メラノーマ誘導マウス(Tyrosinase-CreERT2;BRAFF-V600E/+;PTENF/F)(Jackson 研)を掛け合わせて、以下の3種類(①、②、③)のマウスを作製した。これらのマウスの局所に4-0Hタモキシフェン (4OH-T)を塗布することで、その部分のメラノサイトに、変異型BRAF発現およびPpp6c欠損を誘導することができる。①変異型B-raf+Ppp6cホモ欠損:Tyrosinase-CreERT2; BRAFF-V600E/+;Ppp6cF/F②変異型B-raf+Ppp6cヘテロ欠損:Tyrosinase-CreERT2; BRAFF-V600E/+;Ppp6cF/+③変異型B-raf+Ppp6c正常:Tyrosinase-CreERT2; BRAFF-V600E/+;Ppp6c+/+ 上記3種類のマウスの背中を剃毛し、その皮膚に4OH-Tを塗布した。1年以上の長期観察を行ったが腫瘍の発生はなかった。そこで、4OH-Tを塗布した後にUVB照射(週に2回)をおこなったところ腫瘍が発生し、その頻度は、変異型B-raf+Ppp6cヘテロ欠損>変異型B-raf+Ppp6c正常>変異型B-raf+Ppp6cホモ欠損の順番であった。それらの腫瘍は病理組織学的にメラノーマと診断された。さらに、変異型B-raf+Ppp6cヘテロ欠損またはPpp6c正常の腫瘍からメラノーマ細胞を樹立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)変異型B-raf+Ppp6cヘテロ欠損およびPpp6c正常の腫瘍から、ゲノムを精製し全エクソンシークエンスを行って遺伝子変異の有無とその特徴を調べる。 (2)変異型B-raf+Ppp6cヘテロ欠損およびPpp6c正常の細胞株に関して、そのin vitoの細胞増殖の差と、免疫不全マウスに移植し発生した腫瘍の増殖の差を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度は、全部エキソームシークエンス(約150万円)を予定しており、前年度の研究費の一部を合算して用いる
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