2020 Fiscal Year Research-status Report
白血病における脂質代謝リプログラミングを標的とした新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K17369
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70869594)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、白血病における糖・アミノ酸代謝などの細胞内の主要代謝経路の変容が生み出す白血病に独特の代謝様式が白血病癌幹細胞性や化学療法抵抗性といった白血病難治性の特徴に関与していることがわかりつつある。一方で、この特徴を逆手にとって代謝プロファイルにおける脆弱性を見出し、治療標的化することも可能である。本研究では、これまで研究が遅れている白血病の脂質代謝を治療標的化し新規治療を確立することを目的とする。難治性白血病の代表であるEVI1高発現白血病を再現するEVI1高発現白血病マウスモデルを用いたトランスクリプトーム解析により、脂肪酸代謝にかかわるSCDファミリー遺伝子発現が亢進しており、更に公開されているAML患者のmRNA発現量と予後の関係を解析しSCD高発現がAML患者における予後不良因子であることを見出した。また、治療抵抗性急性骨髄性白血病患者検体の単一細胞トランスクリプトーム解析により、一部の治療抵抗性白血病クラスターにおいて細胞内への脂質取り込みに関連するLDLRの高発現および関連する脂質経路遺伝子群およびLDLRの下流シグナルの遺伝子群が高発現していることを見出した。以上から、脂質関連遺伝子であるSCDやLDLRがそれぞれ個別の経路を介して急性骨髄性白血病の治療抵抗性病態を形成している可能性が示唆された。現在、これらの遺伝子がどのように治療抵抗性に寄与しているか解析を継続して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
難治性白血病の代表例であるEVI1高発現白血病のマウスモデルを用いたRNA-seq解析から、難治性白血病においてSCDをはじめとする脂肪酸代謝酵素の発現上昇を見出した。これらの遺伝子群の高発現はTCGAのmRNA発現量-生存期間解析から、急性骨髄性白血病の予後不良因子である可能性が示唆された。また、治療抵抗性急性骨髄性白血病患者検体の単一細胞トランスクリプトーム解析により、一部の治療抵抗性白血病クラスターにおいて細胞内への脂質取り込みに関連するLDLRの高発現および関連する脂質経路遺伝子群およびLDLRの下流シグナルの遺伝子群が高発現していることを見出した。今後、本遺伝子の高発現が治療抵抗性病態に寄与するかin vitroでSCD、LDLRを強制発現した細胞株に標準的白血病治療薬であるシタラビン、ダウノルビシンを投与することで検証を行い、機能解析に進む予定である。これらの脂質関連遺伝子または経路の治療標的候補の同定に成功しており、一定の進捗が得られていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに同定されたSCDおよびLDLRの各脂質代謝経路がどのように白血病治療抵抗性に寄与しているか、強制発現を行った白血病細胞株を用いて機能解析を行う。具体的には、細胞増殖や化学療法への抵抗性のみならず、特定の脂肪酸や脂質の細胞内蓄積が認められるかについて解析する。一部の脂肪酸などはタンパク質の修飾を介してβカテニンやヘッジホッグシグナルなどの幾つかの重要なシグナルを亢進させることが知られており、副次的な細胞内シグナルへの影響についても解析する。また、実際にこれらの遺伝子の高発現がどのような脂質プロファイルの変容を来しているのかを脂質メタボローム解析を行い検証する。これらの遺伝子や脂質経路に対するノックダウンまたはノックアウトが実際に脂質代謝プロファイルの変容などの上記の形質を打ち消し、治療標的となりうるかを解析する。さらに、治療抵抗性白血病患者の白血病細胞と治療感受性白血病患者の白血病細胞の脂質プロファイルについて解析し、これらの結論が実臨床でも裏付けられるかを検証する。
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