2020 Fiscal Year Research-status Report
癌関連血栓症の病態形成における血小板活性化受容体CLEC-2の寄与
Project/Area Number |
20K17374
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
白井 俊光 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (50710381)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血小板 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌患者では血栓症のリスクが高まることが知られている。この癌関連血栓症は癌患者の2番目の死因であり、そのメカニズムの解明は患者のQOL向上に必要である。 ある種の癌細胞や癌間質細胞にはポドプラニンという膜タンパクが発現しており、様々な形で癌を進展させる。血小板活性化受容体CLEC-2はポドプラニンの受容体であり、ポドプラニン発現細胞は血小板凝集を惹起する。ポドプラニンとCLEC-2の相互作用を阻害しても止血機能への影響がほとんどない事から、CLEC-2は癌組織由来のポドプラニンに由来する血小板の活性化、すなわち癌関連血栓症のみを抑制する可能性が考えられる。 本研究ではCLEC-2が癌関連血栓症の増悪に関与しているかを明らかにし、癌関連血栓症に対する新たな治療標的の可能性を探索する。 2020年度は、乳癌EO771および大腸癌MC-38担癌状態における循環血小板の活性化を解析した。血小板活性化マーカーとしてP-selectinの発現を解析したが、非担癌状態に対する明らかな発現増強を認めなかった。したがって、血栓形成を惹起する必要があることを確認した。その後、最も臨床に近いとされる下大静脈のうっ滞モデルを作成し、MC-38担癌マウスでは血栓形成の増悪の傾向が認められた。しかしながら個体差が大きく、安定した実験結果を得ることができないと判断した。 塩化鉄による血管障害モデルは下大静脈うっ滞モデルよりも再現性が高いことが確認されたので、今後は塩化鉄障害モデルを用いて解析を行うこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳癌細胞株EO771および大腸癌MC-38担癌モデルにおいて、腫瘍増殖に伴う有意な血小板P-selectinの発現増強が認められなかった。また、腫瘍体積が1500 mm3を超えると癌悪液質と思われる貧血および血小板減少が起こるため、腫瘍体積を1000 mm3前後で解析する必要が出てきた。 担癌状態において下大静脈うっ滞による血栓形成が増悪するのかを評価したが、血栓重量の増加の傾向はあるものの、安定した実験結果を示すことができなかった。したがって、血栓形成モデルの変更の必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
塩化鉄の塗布による血栓形成モデルは非担癌状態では再現性が非常に高い事を確認している。またMC-38担癌状態では非担癌状態に比べて血管閉塞時間の短縮が見られているため、今後は塩化鉄を用いた血栓形成モデルを用いて解析を行うこととする。
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