2020 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌シグナルによって制御される多臓器連関造血応答の理解とその制御
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20K17381
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
林 慶和 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (00801078)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液細胞は骨髄の造血幹細胞によって生涯にわたり作られている。これまでに細菌感染により、細菌の構成成分であるリポ多糖(LPS)が造血幹細胞の機能を損傷することが明らかになった。体内には腸内細菌など非常に多くの細菌が共生しており、これらの常在菌が様々な免疫や疾患に関与していることが近年明らかになりつつある。これまでに報告されている細菌感染誘導性の造血幹細胞機能低下と体内に共生する細菌の多様性を考え合わせると、体内に存在する常在菌が骨髄あるいは骨髄外の各組織において造血応答を制御している可能性が考えられる。そこで本研究では、腸炎により腸内細菌が体内浸潤し、どのように造血応答に影響を及ぼすのか解析を行い、その分子メカニズムを解明することを目的とした。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による腸炎モデルマウスを用いて、慢性腸炎を誘導し、造血応答への影響について解析を行った。慢性腸炎を起こしたマウスから造血幹細胞を採取して骨髄移植を行ったところ、骨髄再建能に顕著な低下が見られた。また、慢性腸炎緩解1か月後、グラム陰性菌の細胞壁を構成しTLR4のリガンドであるLPSを全身投与したところ、造血前駆細胞(HSPC)および顆粒球(Gran)のLPSに対する造血応答が顕著に減弱した。このことから、慢性腸炎が造血幹細胞の機能を損傷させることが示唆された。最後に、分子メカニズムを解明するためにRNAシ―クエンス解析を行ったところ、細胞周期関連遺伝子群の発現が上昇しており、細胞周期の亢進が造血幹細胞の機能低下を誘導した可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸管炎症に対する造血応答について詳細を明らかにしつつある。分子メカニズムについてはRNA-Seqを行い複数の候補遺伝子を同定しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
腸管炎症誘導期間を短期にすることで、造血幹細胞の分化を活性化させることがわかってきた。今後はその詳細なメカニズムを探ると同時に慢性腸炎だけでなくその他の炎症モデルを用いて造血応答との関連を探る。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響のため、学会参加の旅費として見込んでいた諸費用がかからなかったため、また、実験設備セットアップ用に見込んでいた費用をある程度抑えることができたため。 生じた次年度使用額については受託解析費用に充当させ、研究の推進に活用させる。
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Research Products
(3 results)