2020 Fiscal Year Research-status Report
多発性骨髄腫におけるCD38経路を介した腫瘍細胞生存機構の解明と新規治療への応用
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20K17382
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
河野 和 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (70776244)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / CD38 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性骨髄腫にてCD38のNAD+分解酵素活性を阻害することで骨髄腫細胞の生存・増殖におけるCD38の意義を明らかにし、CD38の酵素活性を標的とした多発性骨髄腫の新規治療法の開発を目的として研究を開始した。 CD38のNAD+分解酵素活性を低濃度でかつ選択的に阻害する化合物である78cを骨髄腫細胞株に作用させたところ、細胞内NAD+/NADH比の上昇に引き続き、細胞内カルシウム濃度の低下を認めた。また、78cを作用させた骨髄腫細胞ではp21やp27といった細胞周期抑制分子の上昇を伴う細胞周期の抑制を確認した。さらに、78cを作用させた骨髄腫細胞では細胞死が確認され、これらは骨髄腫細胞上のCD38の発現に依存することが明らかとなった。以上より骨髄腫細胞においてCD38の酵素活性が骨髄腫細胞の増殖と生存に必要であり、なおかつ細胞内NAD+や細胞内カルシウム濃度の変動に伴う細胞周期の抑制が寄与していることが示唆された。 多発性骨髄腫の治療中に骨髄腫細胞上のCD38発現低下をしばしば経験する。CD38陰性の細胞分画を有する骨髄腫細胞株よりCD38陰性分画を単離し、78cを作用させても細胞死はほとんど確認されなかった。次にCD38陰性骨髄腫細胞にレチノイン酸を作用させるとCD38陰性骨髄腫細胞のCD38発現回復が確認された。CD38陰性骨髄腫細胞にレチノイン酸投与下で78cを作用させると78c単独の場合と比較して有意に細胞死の増加を認めた。以上よりCD38発現を欠く骨髄腫細胞においてもレチノイン酸などにより細胞上のCD38発現を回復させることでCD38酵素活性阻害による治療戦略は有効であることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熊本大学病院での新型コロナウイルス感染症対策に従事していた影響で本研究課題を行うにあたって時間的な制約が存在したことが本研究課題の進捗がやや遅れている要因の一つと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄腫細胞の生存におけるCD38の役割をより明らかにするためにCD38の発現と関連のある分子の検索を行う予定である。方法としてはCD38陽性分画と陰性分画の双方を有する骨髄腫細胞株(KMS-12BM, KMS11等)を用いてCD38陽性・陰性分画で特異的に発現する蛋白分子をプロテオミクス解析によって検討する。さらに、CD38の発現は細胞内代謝の様々な経路を触媒するNAD+量と密接に関連しており、CD38陽性・陰性分画での代謝の差異をメタボローム解析を用いて検証する。以上の実験系を用いて骨髄腫細胞においてCD38発現で重要なシグナル経路を抽出し、骨髄腫細胞におけるCD38発現の意義や治療中のCD38発現低下機序を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
研究進捗度の関係で本年度行う予定であった実験が一部次年度以降に行う方針となり、物品費の支出が想定より少なかった。また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い参加予定だった学会が一部中止となったりオンラインでの開催となったため、旅費の支出がなかったため、次年度使用額が生じた。本年度行う予定であったメタボローム解析やプロテオーム解析で使用する予定の物品費に助成金を使用する予定である。また、新型コロナウイルス感染症の終息時は開催地での学会参加に伴う旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)