2020 Fiscal Year Research-status Report
C/EBPα変異とBcl11aの協調作用によるAML発症・悪性化機序の解明
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20K17389
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
角南 義孝 公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 研究員 (50732864)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / 骨髄生着 / LSD1阻害剤 / HDAC阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはこれまでにzinc-finger蛋白質をコードするBcl11aが、顆粒球細胞の分化を制御する転写因子PU.1と結合し、その転写活性を抑制することで標的遺伝子の発現を低下させ、AML発症・悪性化を引き起こしていることを明らかにしている。またBcl11aは転写抑制因子として働き、様々なコリプレッサーをリクルートすることが証明されている。そこで、Trib1/Bcl11a AML細胞内でBcl11aに結合するコリプレッサーをノックダウンし、Bcl11aがAML細胞においてリクルートするコリプレッサーを探索した。その結果、LSD1、HDAC1/2、Ncor1/2をノックダウンした時にBcl11a標的遺伝子の発現が回復することがわかった。次にLSD1阻害剤とHDAC阻害剤のTrib1/Bcl11a AML細胞に対する効果を調べたところ、これらの阻害剤を併用した時にBcl11a発現細胞株特異的な腫瘍抑制効果が観察され、さらにLSD1/HDAC阻害剤のAML発症抑制効果はin vivoにおいても確認できた。またLSD1/HDAC阻害剤により発現が回復する遺伝子を検索し、これまでに得られたBcl11aにより発現低下する遺伝子やChIP-seqの結果と合わせることで、Bcl11aの新規標的遺伝子としてE3ユビキチンリガーゼであるAsb2を同定した。Asb2は細胞接着に関わることが知られており、Trib1/Bcl11a AML細胞を用いてAsb2を過剰発現させると、マウス骨髄への生着が阻害された。さらにBcl11a発現細胞株ではAsb2の基質であるfilamin Aの発現が亢進していた。以上から、Bcl11a-Asb2-Filamin経路を介して、Bcl11aがAML細胞の骨髄生着を促進し、その結果、AMLの発症・増悪を引き起こすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AML細胞において、Bcl11aがリクルートするコリプレッサーを同定し、これらに対する阻害剤の抗腫瘍効果についてもin vitroおよびin vivoで証明することができた。さらにBcl11aの新規標的遺伝子として、Asb2を同定し、機能的にもAsb2がBcl11a高発現AML細胞の骨髄生着に関わることを明らかにした。したがって、本研究目的である「AMLが発症・悪性化する分子基盤の解明」に向けて着実に前進していると考え、本年度の進捗状況としてはおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究開始当初は、AMLにおけるC/EBPα変異とBcl11aの協調作用について解析する予定であったが、AML細胞内でBcl11aがリクルートするコリプレッサーを明らかにし、さらにこれらに対する阻害剤を用いた解析によりBcl11aの新規標的遺伝子としてAsb2を同定することができた。Asb2は細胞の接着や浸潤に関連することが知られているものの、AMLにおける役割については十分な検討がなされていない。そこで当初の予定を変更し、Asb2のAMLにおける役割について研究を進めていくこととした。まずBcl11aが高発現しているAML細胞において、Asb2がどのようにAMLの発症・増悪に関わっているのかをより詳細に解析し、次に本年度に明らかにしたようなAsb2-Filamin経路が、Bcl11a非依存的なAMLにおいても、その発症や進展に関与しているかどうかを調べていく予定である。
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