2021 Fiscal Year Research-status Report
T細胞リンパ腫におけるHDAC阻害剤耐性機構の解明と耐性克服の治療戦略の確立
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20K17393
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
北舘 明宏 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (90791559)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HDAC阻害剤 / Stat3 / gp130 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は樹立したHDAC阻害剤耐性T細胞リンパ腫細胞株についての詳細な機能解析を継続しており、耐性細胞株を用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。パスウェイ解析により、cytokine-signalingに関わる遺伝子群の有意な発現亢進を見出しており、このうち、JAK/STAT経路活性化に関わるgp130に着目して検討を行った。Gp130は、インターロイキン6(IL-6)シグナル伝達を活性化するIL-6シグナルトランスデューサーであり、gp130の活性化はstat3/stat5の活性化に寄与する。このgp130の発現亢進を耐性細胞株共通の異常で見出しており、実際耐性細胞株ではstat3活性化の指標であるリン酸化stat3の亢進を確認することができた。さらに、gp130阻害剤を用いて感受性を検討すると、耐性細胞株ではgp130阻害剤への感受性が有意に亢進していることも見出した。一方、全ての耐性株でgp130阻害への感受性が高まるわけではなく、一部の耐性細胞株ではgp130阻害への反応に変化がないものが認められた。そこで、stat3阻害に対する感受性を検討したところ、全ての耐性細胞株でstat3阻害剤への有意な感受性を確認することができている。これらの結果から、HDAC阻害剤耐性細胞の耐性機序にstat3活性化が寄与していること、stat3の阻害が耐性克服のために有用である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HDAC阻害剤耐性細胞における、耐性機序に関わる変化として、gp130/stat3経路の亢進が関与することを同定しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体において、gp130/stat3経路の亢進についての検証を行う予定である。さらに、マウスモデルを用いた実験系により、gp130/stat3経路の阻害がHDAC阻害剤抵抗性の打破に結び付くことを検証していく。
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Causes of Carryover |
網羅的遺伝子発現解析の結果から、細胞株に共通した異常を同定することに時間を要した。このため、想定通りに実験が進まない部分もあり、次年度使用額が発生している。耐性機序の一因となる共通した異常の同定に至っており、使用計画としてマウスを用いた実験や、臨床検体の解析を予定している。
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