2021 Fiscal Year Research-status Report
造血幹細胞におけるHLA-C発現量と抗原抗体反応に関する検討
Project/Area Number |
20K17394
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山下 鷹也 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (90793266)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / HLA抗原 / HLA抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、造血幹細胞におけるHLA抗原の発現を明らかにし、さらに造血幹細胞移植時に重要となるHLA抗体との反応性を探るものです。研究代表者は、これまでに血球成分である顆粒球やリンパ球、血小板などのHLA発現について研究し論文報告を行ってきました。HLAの発現は一様ではなく、特にHLA-C抗原の発現は血球によって大きな差があることを見出しています。これらの研究を進める中で、造血幹細胞移植において核となる造血幹細胞のHLA発現について詳細に研究されていないことに気づき、本研究を着想、遂行しています。 令和3年度は、令和2年度に作成したフローサイトメトリー法の基準を用いて、保存されている末梢血幹細胞検体を追加で解析しました。実験環境を可能な限り同一にするため、全検体を集め終わってからまとめてフローサイトメトリーを行う予定のため、まだ予備実験レベルの少数例の検討ですが、造血幹細胞のHLA発現量にHLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRで差は見られていません。 また、造血幹細胞のHLA抗原の発現量はHLA遺伝子型によって異なる可能性があるため、より多くの検体を調べ多様性を見ることが重要です。保存されている検体だけでは十分な検体数を得られないため、自家末梢血幹細胞移植を予定している患者と同胞間末梢血幹細胞移植ドナーから採取した末梢血幹細胞を患者あるいはドナーに説明し同意を得て新たに5検体保管しました。これらと過去に保存している検体及び令和4年度に得られる検体のHLA発現量、HLA遺伝子型をまとめて解析して結果を報告する予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度の研究計画として、新規保存検体のHLA型の決定とHLA発現量の測定を行うことを挙げていました。 新規保存検体のHLA型の決定に関してですが、同胞間末梢血幹細胞移植ドナーの検体は採取時点で判明しているため追加の検査は不要です。自家末梢血幹細胞移植患者の検体に関してはまだHLA型の検査を行っていませんが、令和4年度に当院の研究室で同検査が行える見込みがあり、外注検査を行う必要が無くなるため待っていました。 末梢血幹細胞検体の解析に関しては令和2年度から大きく進んでいませんが、実験環境を同一にするためまとめて検査する方針のためです。令和4年度に検体の解析を進めていきます。 新規検体取得に関しては令和3年度は5検体保管しました。予定では10検体以上得られる見込みでしたが、説明同意文書の作成が遅れたことなどが要因です。 研究計画がやや遅れた理由として新型コロナウイルスの流行持続、症例数の爆発的な増加のため業務の大幅な増加がありました。令和4年度も新型コロナウイルスの対応は続き、次第に感染増大の波が短期間で大きく起こるようになっているため、研究計画を調整する必要があります。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は保管している抗HLA抗体と同じHLA抗原を発現している造血幹細胞に対する抗体反応性を確認する3つ目の研究を行うことを挙げていました。 まずは令和3年度の研究計画で遅れが生じた、全検体のフローサイトメトリーによる解析を進めます。研究の精度を上げるため、フローサイトメトリーによる解析は検体を一度に調べる予定としているので、遅れはしましたが完成度を高めたいと考えています。また、新型コロナウイルスの流行により、令和2年度は例年よりも移植治療の件数は3分の2に減っていましたが、令和3年度はほぼ例年通りの数に回復しました。令和4年度は反動かさらに多くの移植件数が予定されていますので、新規検体を多数回収できる試算です。これらの検体の中で保存している抗HLA抗体と最も反応性が高い検体を用いて抗原抗体反応の実験を行います。
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Causes of Carryover |
検体のHLA遺伝子型検査(1検体3万円程度)とフローサイトメトリー法を行う予定でしたが、全検体をまとめて検査する方針にしたため差額が発生しました。 令和4年度に令和3年度に施行できなかった分のHLA遺伝子型検査とフローサイトメトリーに必要な抗体を購入し研究を進めます。
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