2020 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the role of necroptosis in hematopoietic stem cell aging and malignant transformation
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20K17395
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 真幸 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80588038)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / ネクロプトーシス / MLKL / 慢性炎症 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
定量PCRの結果、MLKLは成熟血球には殆ど発現しておらず、造血幹細胞を含む未分化な造血細胞で発現が高いことがわかった。興味深いことに、poly I:C投与後のマウスより採取した造血幹細胞では活性型であるリン酸化MLKLの発現が著しく増加していた。さらに、poly I:C投与およびTNF-α投与後において野生型の造血幹細胞の増殖は抑制されたが、Mlkl-/-マウス由来の造血幹細胞では増殖能が有意に改善していた。非造血組織でのMLKLの活性化による二次的な影響を排除するため、野生型マウスにMlkl-/-マウス骨髄細胞を移植して造血細胞特異的Mlkl-/-マウスを作成し、このマウスにpoly I:Cを投与して造血幹細胞の増殖能を同様に評価したところ、poly I:C投与後の造血特異的Mlkl-/-マウスにおいても造血幹細胞の増殖能に有意な改善を認め、造血細胞におけるMLKL活性化が造血幹細胞の増殖能を抑制することが明らかになった。また、5-FUの反復投与による造血老化モデルをMlkl-/-マウスに適用し、造血老化表現系が再現されるか検討したところ、各5-FU投与後の骨髄抑制および回復過程は野生型マウスとMlkl-/-マウスで同等であったが、反復投与終了後において野生型マウスで認められる骨髄球系優位の血球産生がMlkl-/-マウスでは抑制されていた。さらに、野生型マウスでは造血幹細胞数の著明な増加が認められたが、Mlkl-/-マウスではその効果が抑制されていた。これらのマウスから採取した同数の造血幹細胞を競合的に移植したところ、野生型造血幹細胞では骨髄再構築能の減弱およびミエロイド優位な血球分化という老化様の表現系を示したが、Mlkl-/-マウスではそれらの改善を認めた。すなわち、5-FUによって誘導される造血幹細胞の老化様表現系がMLKLの欠損で抑制されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、5-FU反復投与を用いた造血老化モデルの解析によって、MLKLが造血幹細胞の老化様変化の一端を担うことを明らかにすることができた。また、次年度の研究に必要な老齢Mlkl-/-マウス、MDSモデル作成のためのRosaCreERT2::Ezh2fl/fl::Mlkl-/-マウスおよびRUNX1s291fsレトロウイルスベクターを予定通り準備することができた。さらに、当初の計画には含まれなかったが、炎症とネクロプトーシスの関係を明らかにするためにpoly I:CやTNF-αを用いた炎症モデルをMlkl-/-マウスに適用し、炎症刺激が造血幹細胞においてMLKLを活性化し、造血幹細胞の機能を抑制することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
poly I:Cのin vivo投与はI型インターフェロンを介して造血幹細胞の機能を抑制することが知られているが、造血幹細胞におけるMLKLの活性化がその作用の少なくとも一部を担うことを筆者らの結果は示唆している。筆者らは造血幹細胞レベルでの細胞死が造血器腫瘍の発症予防に重要であることを報告しており、本年度は造血幹細胞がMLKLを利用して悪性化を防いでいる可能性について、Ezh2Δ/ΔRUNX1s291fsを用いたMDSモデルをMlkl-/-に適用することによって検証する。また、活性化したMLKLは細胞膜へと移行し、チャネル様の穴を形成することによってネクローシス様の細胞死を引き起こすが、MLKLの持つ細胞死以外の機能も最近注目されている。従って、本研究でみられた造血幹細胞の機能低下が自身の細胞死によるものか、あるいはMLKLが持つ細胞死以外の機能によるものかについては今後更なる検証を行う予定である。インターフェロン応答はTNF-α応答とともに老齢マウス造血幹細胞において有意に増加する遺伝子シグネチャーの一つである。筆者らはTNF-α暴露後の造血幹細胞がMLKLを介して機能低下に至ることを見出しており、加齢に伴う炎症刺激がMLKLを介して造血幹細胞の加齢性変化を促進する可能性を実際に加齢したMlkl-/-マウスを解析することによって検証する。
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