2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of clinical method for chronic GVHD focused on organ fibrosis
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20K17399
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊野 和子 三重大学, 医学系研究科, 助教 (60775568)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 同種造血幹細胞移植 / 慢性GVHD / 臓器・組織線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、同種移植後慢性GVHDにおける臓器・組織線維化メカニズムを、末梢血単球に由来する線維細胞、また、その前駆細胞に着目し解析することを目的としている。ヒト慢性GVHDに類似した病態を呈するマウスモデルを用いた解析、同種移植後の患者検体を用いた臨床的検討、および培養実験系による単球系細胞の機能獲得メカニズムの解析を計画している。 GVHDマウスモデルを用いた検討では、GVHD標的臓器を摘出・固定するとともに末梢血を採取し、フローサイトメトリー法により、リンパ球などの免疫細胞、単球、および線維細胞、また、その前駆細胞の測定を行っている。この結果、移植後2週間程経過した比較的早期から、マウス末梢血中に活性化単球の出現を認め、移植後4~6週経過した時点から、T細胞、B細胞、NK細胞といったドナー由来免疫細胞の出現を認めている。 同種移植後患者検体を用いた検討では、三重大学倫理審査委員会にて承認を得た上で、三重大学の同種移植患者の末梢血中単球および線維細胞について経時的に検討を行っている。この結果、同様に移植後比較的早期から、末梢血中に活性化単球の出現を認め、これら細胞は長期に渡って末梢血中から検出されることが確認されている。加えて、同様に同種移植後患者検体から、血漿中のPD-1、 PD-L1、CTLA-4といった免疫関連分子の経時的な測定を行うことで、免疫関連分子と急性・慢性GVHDとの関連についても検討を行っている。 また、同様の同種移植後患者末梢血検体から、活性化単球を分離し、サイトカインやtoll like receptorアゴニストで刺激を行い、シグナル伝達経様式、表現型の変化、サイトカイン産生能、コラーゲン産生能等の変化の検討を予定している。これら結果から、慢性GVHDにおける臓器・組織線維化病態の解明と、制御法の開発に繋げる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GVHDマウスモデルを用いた検討では、移植後組織線維化モデルとして、腫瘍組織適合抗原一致マウスモデルが三重大学で確立しており、これを用いて、フローサイトメトリー法、免疫組織染色により、末梢血およびGVHD標的臓器内でのドナー由来細胞の検討を行っている。末梢血およびGVHD標的細胞内でのドナー由来細胞は、コンジェニックマウスあるいはEGFPトランスジェニックマウスをドナーに用いることで、各種細胞特有のマーカーとの共染色により追跡可能となっている。フローサイトメトリー法では、リンパ球、単球とあわせて、線維細胞、その前駆細胞の測定を経時的に行っている。また、GVHD標的臓器においては、各種染色により構造変化、コラーゲンの蓄積の解析を行っている。 また、同種移植後の臨床検体を用いた検討においては、三重大学倫理審査委員会にて承認を得た上で、三重県内の移植症例の末梢血検体の蓄積を行っている。これら検体を用いて、フローサイトメトリー法により、末梢血中の単球、線維細胞の経時的な解析を行っている。また、同様の検体を用いて、血漿中のPD-1、PD-L1、CTLA-4といった免疫関連分子についても経時的な解析を行っている。こうした各種解析結果と、急性・慢性GVHDを含む臨床経過をあわせて検討することで、同種移植後のGVHDにおける臓器・組織線維化メカニズムについての検討を行っている。 また、今後、同様に同種移植後の患者末梢血検体から活性化単球を分離し、培養実験系を用いて単球系細胞の機能獲得メカニズムの解析についても検討を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、GVHDマウスモデルを用いた検討では、さらにマウス検討数を増やすとともに、各種免疫染色の追加、フローサイトメトリー法を用いた検討を経時的に行うことで、移植後組織線維化メカニズムについて、さらに詳細な検討を予定している。 また、同種移植後の臨床検体を用いた検討においても、さらに症例数を蓄積して継続することを予定している。こうした症例における急性・慢性GVHDの発症時期を含めた臨床経過とあわせて、末梢血のフローサイトメトリー法により、CD45、CD14、トロンボポイエチン受容体、SLAMF7等の各種抗体を用いて、単球、線維細胞、およびその前駆細胞を経時的に測定し、加えて、同時点での血漿中のPD-1、PD-L1、CTLA-4といった免疫関連分子についても経時的に測定を予定している。こうした結果を踏まえて同種移植後慢性GVHDの発症と臓器・組織線維化メカニズムの検討を継続していく予定としている。 加えて、同様の同種移植後の患者末梢血検体から、SLAMF7発現活性化単球を分離し、サイトカインやtoll like receptorアゴニストで刺激を行い、シグナル伝達経様式、表現型の変化、サイトカイン産生能、コラーゲン産生能等の変化の検討を予定している。加えて、種々の病態モデルで線維化抑制が報告されているチロシンキナーゼ阻害薬やJAK阻害薬等、GVHDを抑制しうる薬剤を、これらGVHDマウスモデル実験系、同種移植患者の末梢血からの培養実験系において、それぞれ投与または添加することで、個体レベルでの効果、細胞レベルでの効果を確認し、GVHDへの至適介入方法、介入時期を検討することを予定している。 これら研究結果より、同種移植後慢性GVHDにおける臓器・組織線維化メカニズムの解明と制御法の開発に繋げることを予定している。
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Causes of Carryover |
令和2年度、世界的なコロナウイルス感染症の広がりにより、例年であれば、対面形式で施行となる国内学会、海外学会がいずれも中止やWeb開催へ変更となった。また、実験動物の購入、実験試薬の購入においても、一部制限がみられた。令和3年度については、こうした制限の解除もみられるようになっていたが、やはりコロナウイルス感染症の広がりは続いている状況であった。現在、徐々にコロナウイルス感染症と共に研究進行が可能となる状況となっており、令4和年度以降、再度、実験動物の購入、繁殖、また、各種研究資材の購入を行い研究の継続を予定している。
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