2020 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1感染伝播、ATLの発症/悪性化を阻止しうる新規治療の開発
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20K17402
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
原田 武志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (10618359)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血液腫瘍学 / 成人T細胞白血病リンパ腫 / PIM1 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)細胞では、T細胞受容体(TCR)-NF-kB経路の遺伝子変異と構成的活性化により、腫瘍増殖と治療抵抗性を獲得している。これまでの研究で、骨髄腫細胞において、セリンスレオニンキナーゼTAK1(MAP3K7)はNF-kappaB経路やp38MAPK経路などのシグナル伝達経路を調節するマスター調節因子であることを研究代表者は見出してきたが、ATL細胞株(TL-Om1、Hut102、Su9T01)において、shRNAを用いたMAP3K7発現抑制では、ATL細胞の増殖抑制効果は乏しかった。しかし、NF-kB経路の転写因子RELAの発現抑制は著明なATL増殖抑制を認めた。さらに、TAK1とIkkaを阻害するLL-Z1640-2は濃度依存的にATL細胞株にアポトーシスを誘導した。NSGマウスにTL-Om1を皮下移植するATLマウスモデルにおいて、LL-Z1640-2の腹腔内隔日投与(20 mg/kg)は腫瘍増殖抑制効果を発揮した。以上の結果から、ATLにおいては、NF-kB経路でのIkkaやRelAの治療標的因子としての可能性を見出した。 セリンスレオニンキナーゼPIMは、NF-kB経路やJAK-STAT3経路で制御されるがん原遺伝子である。正常細胞(末梢血単核細胞)と比較すると、PIMキナーゼファミリーの中でもPIM1が高発現しており、PIM1発現抑制はATL細胞株の増殖を抑制した。また、PIM阻害薬PIM447は、ATL細胞の増殖抑制効果を濃度依存的に発揮した。LL-Z1640-2処理またはRELA発現抑制は、ATL細胞のPIM1発現を抑制し、RelAによるPIM1転写制御が考えられた。さらに、PIM447処理またはPIM1発現抑制は、RelAの発現抑制を来たし、ATL細胞におけるNF-kB-PIM1ポジティブフィードバック機構の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ATLの治療抵抗性の克服とHTLV-1感染伝播の阻止を目的として、TAK1-NF-kB経路とPIM1を治療標的に据えながら、ATL細胞とHTLV-1感染細胞における役割解明を進めている。今年度は、NF-kB経路阻害剤LL-Z1640-2による高い抗ATL活性をin vitroとin vivoで確認し、そのNF-kappaB経路はPIM1発現制御に関わっていることを明らかにした。また、NF-kB経路阻害によるHTLV-1感染伝播の評価についても実験系を確立できており、HTLV-1感染伝播に関する評価を次年度は進める予定である。以上のように、本研究は当初の計画通り、ATL細胞の治療抵抗性の克服のみならず、HTLV-1感染伝播機構にも焦点を当てた研究を進めており、研究の達成度は概ね順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究で明らかとなったATL細胞におけるNF-kB経路とPIM1の相互の制御機構の解明を進める。RelAのPIM1プロモーター領域への結合をChIP-Q-PCR法で検討する。RelAまたはNF-kB経路構成因子について、PIM1のリン酸化修飾を中心とする翻訳後修飾の解析を行う。TCR-NF-kB経路の下流では転写因子IRF4とc-MycがATL細胞の生存増殖に重要な役割を担っているとされており、これらとPIM1の相互の関係についても検討を行う。また、ATL動物モデルを用いてLL-Z1640-2の有効性を実証したように、PIM447についても同様の検討を行う。LL-Z1640-2とPIM447の併用効果についても検証を予定する。 HTLV-1感染伝播機構の解明を進める。初年度の予備検討で、HTLV-1 LTR導入細胞株H9/K30lucを用いたHTLV-1感染評価の実験系を確立している。LL-Z1640-2やPIM447でATL細胞株を処理し、そのATL細胞株とH9/K30lucの共培養後のルシフェラーゼを検出し、HTLV-1感染伝播への影響を検証する。ATL発症機序を明らかにするために、HTLV-1感染伝播後の細胞の増殖能とdormancyへの影響について検討を行う。具体的には、Jurkat細胞株や健常人末梢血単核細胞(PBMC)をHTLV-1感染細胞株と共培養後、T細胞分画の増殖能や、細胞表面CCR4, PD-L1や細胞内FoxP3, T-betなどの発現および細胞周期をフローサイトメトリーで解析し、HTLV-1感染の影響を検討する。また、細胞周期関連因子のcyclin DやCDK familyについても評価し、さらに抗腫瘍薬doxorubicinへの感受性を非感染Jurkat細胞と比較検討し、腫瘍dormancyと治療抵抗性の関連を検討する。
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[Presentation] Critical roles of the TAK1-c-Myc loop as a novel therapeutic target for ATL2020
Author(s)
Oura M, Harada T, Teramachi J, Oda A, Inoue Y, Sogabe K, Sumitani R, Fujii S, Nakamura S, Miki H, Kagawa K, Hasegawa H, Fujiwara H, Abe M
Organizer
The 82nd Annual Meeting of the Japanese Society of Hematology