2020 Fiscal Year Research-status Report
Dysregulated mitochondrial dynamics as an underlying mechanism of MDS bone marrow failure
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20K17411
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
林 嘉宏 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (30802590)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / ミトコンドリア断片化 / DRP1 / ROS |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄不全症を主病態とする低リスクMDS患者において共存関係が見出されたCBL-exon 8/9欠失変異とRUNX1変異に着目し、これらの変異体を遺伝子導入した骨髄細胞を野生型マウスに骨髄移植してモデルマウスを作製した。このマウスでは、前駆細胞集団の拡大、骨髄系細胞の分化障害、汎血球減少、異形成がみられ、MDS骨髄不全症の病態が忠実に再現された。RNAシーケンス解析の結果、MDSマウスの造血幹細胞・前駆細胞(HSPCs)では、骨髄不全症を伴うMDS患者に特徴的な遺伝子発現パターンが誘導されていた。さらに、ミトコンドリア関連遺伝子群の制御異常、ミトコンドリアの断片化、活性酸素種レベルの著明な上昇がみられた。 ミトコンドリア機能を評価するため、MDSマウスから回収したHSPCsにおいて、蛍光プローブを用いたミトコンドリア膜電位を評価したところ、膜電位の低下はみられなかった。また、同一細胞数のHSPCsを細胞外フラックスアナライザーで解析すると、基礎呼吸やATP産生能がコントロールマウスよりも上昇していた。ミトコンドリア断片化において中心的な役割を果たす因子としてDRP1が知られている。ミトコンドリア断片化機序を明らかにするため、Drp1発現およびリン酸化レベルをウエスタンブロッティング法で調べたところ、MDSマウスのHSCPsにおけるDrp1およびS616-pDrp1発現レベルはコントロールマウスに比べて有意に上昇していた。DRP1選択的阻害剤(Mdivi-1)をMDSマウスに投与したところ、ミトコンドリア断片化の減弱、ROSレベルの低下、骨髄系細胞分化障害と血球減少の改善が確認された。これらの結果から、MDSマウスのHSCPsで生じているミトコンドリアの過剰な断片化にDRP1を介した機序が関与していること、それがROS産生やMDS無効造血発症の引き金となっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画のうち、(1)新規MDS骨髄不全症モデルマウスの造血細胞におけるミトコンドリア機能の評価、(2)ミトコンドリアダイナミクス制御異常が生じる機序の検討、(3)ミトコンドリアダイナミクス制御異常とROS過剰産生の関連性評価について実施し、結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的検討により、MDSマウスの骨髄は腫瘍クローン由来の異形成を伴う骨髄系細胞で占拠されるが、総骨髄細胞数は有意に減少する(無効造血)ことを確認している。これは実際のMDS患者でも広くみられる現象であり、骨髄系細胞の分化障害や何らかの機序に伴う細胞死の亢進を示唆している。MDSマウス骨髄細胞のフローサイトメトリー、セルソーターで回収した細胞サンプルを用いた免疫細胞染色、ウエスタンブロッティング法を用いて様々な細胞死(アポトーシス、ネクロトーシス、オートファジー、パイロトーシス)に関わるタンパクを測定する。同時に、RNAシークエンス解析によりそれらに関わる遺伝子群の発現変化も明らかにしていく。さらに、ROS除去剤や上記解析で同定した細胞分化障害・細胞死機序の選択的阻害剤をMDSマウスに投与し、治療標的としての有用性の検証を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症に関連した社会情勢のため、予定していた学会出張を全て取りやめた。また、緊急事態宣言に関連した施設内の取り決めにより、一時的に実験中断を余儀なくされた時期があり、実験計画の進行具合と合わせて一部の試薬等の購入を見合わせた。 (使用計画)新年度の配分額と合算し、全て使用する。
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