2020 Fiscal Year Research-status Report
Impact of chemokine on endocapillary proliferative lesions and wire-loop lesions in lupus nephritis
Project/Area Number |
20K17424
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藏島 乾 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任助教 (00632506)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ループス腎炎 / ケモカイン / ケモカイン受容体 / マクロファージ / 管内細胞増多病変 / ワイヤーループ病変 |
Outline of Annual Research Achievements |
ループス腎炎は全身性エリテマトーデスの臓器病変のうち最も頻度が高く難治性である。病理学的に管内細胞増多病変やワイヤーループ病変を含む多彩な病変が形成されるが、各病変を形成するそれぞれの病態は不明である。 本研究は、各病変において、ケモカイン・ケモカイン受容体の寄与の違いや、ステロイドに代わる治療ターゲットとしての有効性を明らかにすることを目的とした。 今年度は、MRL/lprマウスから作成したモノクローナルIgG3産生ハイブリドーマをBalb/cマウス(WT)に投与し、各病変を単独で形成するモデルを作成した。ELISAでは血清IgG3濃度に各マウス間で有意差はなかった。管内細胞増多病変やワイヤーループ病変を比較すると、免疫組織化学染色で各病変において糸球体浸潤マクロファージが前者で多かった。real-time PCRと免疫蛍光染色などで腎皮質のケモカイン・ケモカイン受容体の網羅的解析を行うと、CCL2/CCR2、CCL3/CCR5、CX3CL1/CX3CR1の発現が管内細胞増多病変で多いことを示した。CCR2、CCR5、CX3CR1各欠損マウスに上記ハイブリドーマを投与し、病変の変化を組織学的に評価した。その結果、各ケモカイン・ケモカイン受容体の影響の程度が管内細胞増多病変で異なることが判明した。さらに、WTと各欠損マウス間で骨髄キメラマウスを作成し、骨髄由来細胞の影響を検討中である。また、各ハイブリドーマが産生するモノクローナルIgG3を精製し、WTに投与して抗体自体の病原性を評価中である。 本研究によりループス腎炎の病変ごとの病態を明らかにし、病態ごとの個別化医療につながることが期待できると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①ループス腎炎モデルMRL/lprマウスの脾細胞とBalb/cマウス由来のNS-1骨髄腫細胞由来のモノクローナルIgG3産生ハイブリドーマ(3種類)をBalb/cマウス(WT)に投与し、継時的に管内細胞増多病変とワイヤーループ病変がそれぞれ個別に形成されることを確認した。光顕、蛍光、電顕でそれぞれの形態や免疫複合体の評価を行った。ELISAでは各マウスの血清IgG3濃度は同程度だった。免疫組織染色では糸球体に浸潤したマクロファージ(抗CD68抗体陽性細胞)は管内細胞増多病変でワイヤーループ病変より多かった。各マウスの腎皮質におけるケモカイン・ケモカイン受容体のmRNA発現をreal-time PCRで網羅的に検討したところ、CCL2/CCR2、CCL3/CCR5、CX3CL1/CX3CR1の発現が管内細胞増多病変で亢進していた。免疫蛍光染色やウェスタンブロット法でもこれらの蛋白発現が管内細胞増多病変で多いことを確認した。各ケモカイン・ケモカイン受容体と、CD68やCD31(内皮細胞)などとの二重蛍光染色を行い、その発現細胞を特定した。また、各ハイブリドーマが産生するモノクローナルIgG3を精製した。抗体自体の病原性を評価中である。 ②CCR2、CCR5、CX3CR1の各欠損マウスに上記ハイブリドーマを投与し、上記同様に組織学的評価を行った。これらのケモカイン・ケモカイン受容体の管内細胞増多病変への関与の程度が異なることが判明した。 ③WTと各欠損マウス間で骨髄キメラマウスを作成した。上記ハイブリドーマを投与して骨髄由来細胞の影響を検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
①今年度は管内細胞増多病変におけるケモカイン・ケモカイン受容体の影響を評価したので、次年度は次の段階としてワイヤーループ病変におけるこれらの影響を評価する。具体的にはワイヤーループ病変を形成するモノクローナルIgG3産生ハイブリドーマを各ケモカイン・ケモカイン受容体欠損マウスに投与し、組織学的な検討を行う。また、CCR5阻害薬であるマラビロクをWTに投与し、管内細胞増多病変やワイヤーループ病変への効果を検討する実験を追加する。 ②腎炎原性ハイブリドーマから精製したIgG3をWTなどに投与し、抗体自体の病原性に関して検討する。 ③WTと各ケモカイン・ケモカイン受容体欠損マウス間で作成した骨髄キメラマウスにハイブリドーマや精製IgG3を投与して骨髄由来細胞の関与を検討する。
|
Causes of Carryover |
当初の予定通り骨髄由来細胞の関与を検討するため骨髄キメラマウスでの検討を次年度行う。 また、腎炎原性ハイブリドーマが産生するIgG3の精製において、抗体のクリオグロブリン活性などの問題から、検体の保存温度の調節が必要であったり、高濃度の精製が困難であったりすることが判明した。特定の条件で、継続的に少量ずつ精製する必要があり、当初の予定より時間と追加費用を要する。
|