2020 Fiscal Year Research-status Report
免疫細胞指向性DDSを用いた肺線維症の核酸治療開発
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20K17425
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 和 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (20781793)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺線維症 / 核酸医薬 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症 (IPF) は、指定難病である特発性間質性肺炎の一つで、予後不良であり、近年2つの抗線維化剤がわが国で保険償還されたが、その効果は軽微な疾患進行の抑制にとどまり、全生存期間延長をもたらす画期的な治療法がないのが現状である。当グループはこれまで、癌や炎症性腸疾患において核酸を病巣の免疫細胞に効率的に取り込ませるドラッグデリバリーシステム (スーパーアパタイト:sCA) を開発してきた。肺線維症においても病巣部に樹状細胞が集積し、慢性的な炎症の持続とそれに伴う線維化を引き起こすことが知られている。そこで肺線維症モデルマウスを用いた先行研究を行った結果、sCAが肺線維症の肺組織においても樹状細胞や制御性T細胞に効率的に核酸を送達することを確認した。そこで本研究では、sCAを用いて樹状細胞によるナイーブT細胞から炎症性T細胞の活性化を抑制する、あるいは制御性T細胞の活性をコントロールすることでIPFの病態を劇的に改善する核酸医薬(microRNA, siRNA)を同定し、IPFに対する画期的な核酸治療を実現することを目的とする。本年度はコントロールマウスと肺線維症モデルマウスの肺組織より樹状細胞を単離し、RNA-seqを実施した。その結果、肺線維症の樹状細胞においてナイーブT細胞活性化の補助刺激分子であるCD80, CD86の発現が上昇していることが明らかとなった。さらに単離した樹状細胞サンプルに対し、microRNA-seqを実施し、肺線維症の樹状細胞において発現が低下しているmicroRNAを同定した。それらの中から、CD80, CD86を標的としうるmicroRNAをin silico解析によって絞り込んだ。今後はin vitro, in vivo実験によって絞り込んだ核酸医薬候補の効果について検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコントロールマウスとブレオマイシン投与後10日が経過した肺線維症マウスの肺組織から細胞表面抗原に対する抗体を用いてFACSにて樹状細胞を単離し、RNA-seqとmicroRNA-seqを実施した。その結果、肺線維症マウスの樹状細胞においてCD80, CD86の発現が上昇していることが明らかとなった。さらにmicroRNA-seqの結果から、肺線維症マウスの樹状細胞において発現が低下しているmicroRNAを同定し、Targetscanを用いたin silico解析によってCD80, CD86を標的としうるmicroRNA候補を絞り込んだ。さらにin vitro実験で候補microRNAの効果を検討するためにマウスマクロファージ細胞株であるJ774A.1細胞を用いて予備実験を行った。J774A.1細胞ではCD80, CD86は共に高発現していることが確認できており、今後詳細な検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降はJ774A.1、さらにマウス樹状細胞株であるDC2.4細胞やマウスの骨髄から単離した樹状細胞を用いて、絞り込んだmicroRNAの効果について検討を行っていく。In vitro実験でさらに絞り込んだ治療的microRNA候補をsCAに内包したものを肺線維症モデルマウスに投与し、治療効果を検討する。さらに同様のアプローチで制御性T細胞を標的とした治療的microRNA候補の絞り込みも行っていく。
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