2020 Fiscal Year Research-status Report
Adaptation of therapeutic agents for Th1 cell dependent severe asthma using asthmatic murine model
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20K17436
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Research Institution | Clinical Research Center for Allergy and Rheumatology, National Hospital Organization, Sagamihara National Hospital |
Principal Investigator |
神山 智 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 先端技術開発研究部, 研究員 (20626783)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アレルギー / 喘息 / サイトカイン / Th細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、マウスの喘息モデルを独自に樹立し、その特性解析を進める過程で、重症性の遅発型喘息を誘発するT細胞クローン株がいずれもTh1型であり、ステロイド抵抗性を示すことを明らかにした。従来の知見に基づくTh2ターゲットの治療とは異なるアプローチが求められることに着目し、近年開発が加速し、新たな治療ターゲットとして期待されている分子標的治療薬の投与効果を検証するこの度の研究を計画した。病因となるシグナル経路に対し、極めて高い特異性で阻害効果を持つ分子標的治療薬の中には、治験が進められているものから実際に海外で承認済みのものまで多数存在する。ただしこれらの適応は悪性リンパ腫をはじめとするガン治療に多く、アレルギー疾患への適応について優先的な研究な情報は途上であり、情報が不足している。現在、T細胞クローンとその動物モデルから治療効果を調査し、治験の足掛かりを目指した研究を行っている。 研究計画の実施に当たって、T細胞内の主要なシグナル伝達経路であるリン酸化酵素(キナーゼ)を主要な標的とし、現在入手可能なキナーゼ阻害剤より候補を選出した。候補A、候補Bともに一部の難治性白血病での適応がアメリカ食品医薬品局に承認されている。このほか、海外にて治験の進んでいる治療薬を複数選出した。これらの安全性の基準をクリアしている医薬の適応拡大を目指すことで、今後の前臨床および臨床段階の試験をより効率的に進められることが期待できる。これは生命倫理上の不要な動物実験の削減の観点からも効率的である。また並行して、T細胞クローンについて、ステロイド添加下で培養増殖を繰り返し、よりステロイド抵抗性の高い系統の選抜と維持を行った。以前のT細胞クローンよりさらに高容量のステロイド存在下で高い活性を維持していることから、T細胞のステロイド抵抗性を詳細に研究する上で、より適した細胞系統を拡充することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
喘息以外の疾患で承認または治験を開始しているものから、標的への選択性が高く副作用の低い、高い治療効果の期待できる薬剤をリスト化し、現在入手可能なものから試験した。 PI3K/Akt経路は主要なT細胞の上流因子で、細胞増殖・生存や炎症を亢進させることに注目した。PI3Kの触媒サブユニット(p110α、p110β、p110γ、p110δ)のうち、主に免疫系の細胞で発現するp110γおよびp110δをターゲットとして、p110γ/δ標的薬(候補A)、p110δ標的薬(候補B)、p110β/δ標的薬(候補C)を用いて、マウスTh1細胞クローンによる増殖試験とサイトカイン測定を行った。 高容量デキサメタゾン下でも増殖活性を維持したTh1クローンに対し、単独投与での抑制効果とデキサメタゾンとの相乗効果を確認することができた。また、ステロイド抵抗性T細胞クローンにステロイド感受性の傾向が見られたため、よりステロイド抵抗性の高い系統の選抜を行った。高濃度デキサメタゾン下でT細胞クローンを継代し、3つのクローンで以前よりステロイド抵抗性の非常に高い株を選抜できた。同一クローン内でステロイド感受性の多様性が得られたことは、遺伝子発現解析の際、遺伝的バックグラウンドのノイズを削減する上で有用であると考えられる。 さらに、T細胞の増殖・維持に必要な抗原提示の際、従来のマウス脾臓由来抗原提示細胞に替わり、プレートに固相化した抗CD3抗体で持続的な細胞の継代が可能であるか調査している。2か月以上の期間に渡り細胞の継代維持が可能であることを確認したが、T細胞クローンの系統ごとに固相化抗CD3抗体の至適濃度が異なり、それ以上でアポトーシスを引き起こすことが示唆された。これらの所見はT細胞のステロイド抵抗性を詳細に研究する上で有用である。また、より広範な細胞系統を拡充することができたと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
経過はおおむね順調である。引き続きin vitro実験を拡充し、さらなる治療薬候補を供試するとともに、その評価をもとにin vivo実験を推進する。T細胞クローン移入マウス喘息モデルへ投与し、喘息症状に対する治療効果を呼吸機能解析と組織病理およびバイオマーカーから診断・評価する。特に有力と判断された治療薬は投与スケジュールや用量の効果を詳細に調査するほか、治療薬候補単独の投与だけでなく、喘息に用いられる代表的なステロイド薬を併用した相乗効果をin vitro・in vivo両面から明らかにする。また、すでに同一クローン内でより高いステロイド抵抗性選抜を果たした。同一クローンのステロイド抵抗性選抜系統におけるin vivoの影響を比較調査する。この細胞株について、受託DNAマイクロアレイ解析を利用し、遺伝子発現レベルで比較することを計画している。同一の遺伝的バックグラウンドにおけるステロイド抵抗性の違いは、原因因子の抽出に有利に働く可能性が高い。これらの機序の解明とともに、分子標的治療薬の有効性の検証を目指す。
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Causes of Carryover |
試薬や消耗品について、所属研究室で購入して在庫を抱えているもの・他の研究で購入したものの余剰品を融通したため、初年度において実際に購入する機会にあたらなかった。試薬および消耗品の購入は、今年度の実験の実施にあたり、さらに推進することが見込まれる。
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