2021 Fiscal Year Research-status Report
T細胞に着目した特発性多中心性キャッスルマン病の病態解明
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20K17444
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
住吉 玲美 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70859363)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | iMCD-NOS / iMCD-TAFRO / mTOR / IGFBP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性多中心性キャッスルマン病(idiopathic multicentric Castleman's disease: iMCD)の病型の違いに着目してTAFRO徴候を伴うより重篤な病態であるiMCD-TAFROとそれ以外の病型であるiMCD-NOS(iMCD-not otherwise specified)分子学的な差異について検討した。(方法)当院でiMCDと診断された4名(iMCD-NOS: 2名、iMCD-TAFRO: 2名)の末梢血からCD4陽性T細胞を単離し、RNAシーケンスを行った。(結果)iMCD-NOSと比較して、iMCD-TAFRO患者ではmTOR Signaling、HIF1α Signaling、p70S6K Signaling、Regulation of eIF4 and p70S6K SignalingといったmTOR関連シグナルが亢進し、ミトコンドリア経路である酸化的リン酸化が抑制されていた。また、mTOR阻害剤であるシロリムスを投与した症例では、シロリムス投与後にmTORに関連するシグナルの減少がみられた。 (考察)これまでiMCD-TAFROについては、活動期にmTOR経路の活性化の報告があったが、iMCD-NOSとiMCD-TAFROを比較した報告はなかった。今回の検討でiMCD-NOSと比較してiMCD-TAFROにおいて、よりmTOR経路の活性化を認めることが示され、病態・臨床像の違いに寄与している可能性が示された。また、mTOR阻害薬にて実際にmTOR関連シグナルが有意に抑制されることが確認された。 さらに、昨年までの研究結果より、病型による違いが示唆される血清蛋白であるIGFBP-1について、症例数を増やして、他の炎症性疾患である関節リウマチも含めてELISA Kitで検討した。iMCD-NOS:11名、iMCD-TAFRO:7名、健常者:28名、関節リウマチ:8名で比較したところ、iMCD-TAFROにおいて他の群より有意に血清IGFBP-1が高値であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iMCD-NOSとiMCD-TAFROの病型の違いによるRNAシーケンス結果の違いや血清蛋白(IGFBP-1)の違いが明らかになっており、これまでの結果と合わせて、iMCD-NOSとiMCD-TAFROにおける分子学的な差異について検討できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
1.共同研究施設からの検体も集めてフローサイトメトリー解析を行う症例数を増やし、Th1やTh17,Tph,Tfhについて、病型や治療反応性に関して一定の傾向が あるか検討する。 2.IGFBP-1について、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの他の炎症性疾患についての検討も追加し、iMCD症例と比較する。 3.PI3K/Akt/mTOR経路がどの細胞分画で活性化しているかを明らかにする。Thサブセット(特にTfhやTph等)やB細胞、単球におけるmTORの活性化をS6蛋白のリ ン酸化を指標に評価する。 4.血清IGFBP-1高値症例で活性化しているシグナルを同定する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画調書、交付申請書に記載していた計画のうち、旅費についてはCOVID-19の流行により学会がweb開催となったため、旅費の使用がなかった。ま た、リンパ節組織・末梢血のフローサイトメトリー解析については、令和3年度は新規患者数が予想より少なかったため、想定していたほどフローサイトメトリー 解析が行えず、それらの試薬等で予定していた研究費は次年度持ち越しとなる。なお、iMCDの病態との関連が示唆される蛋白であるIGFBP-1については、さらに症例数を増やし、他の炎症性疾患患者や他施設からの血清を収集して追加実験を行う予定であり、その試薬の購入等に充てる。また、血清IGFBP-1高値症例で活性化しているシグナルを同定するために、CD4陽性T細胞以外のRNAシーケンス解析を検討しており、その試薬購入や解析に使用するPC購入等に使用予定である。
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Research Products
(3 results)