2020 Fiscal Year Research-status Report
全身性エリテマトーデスにおけるインターフェロンα過剰産生メカニズムの解明
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20K17452
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
村山 豪 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80850908)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / インターフェロンα / 単球 / STING / 核酸受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
①申請当初の研究目的と実績: 「細胞質核酸受容体であるcGASとその下流のシグナル伝達分子であるSTINGを介して単球からIFNαが産生され、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)患者でこの経路が亢進している」という仮説を元に、本研究では、SLE患者由来IFNα産生単球を遺伝子解析し、特異的に発現する分子を検索する。またループス病態自然発症マウスを用いてSTING欠損単球を持つループスマウスを作製し解析する。STINGクリアランスに関わるオートファジー作動薬によるSTING経路を介したIFNα産生抑制を検証し、SLEにおける新規治療の提案を目指した。 ②当該年度に実施した研究: 2020年度は、IFNα産生細胞とSLE病態との関連性の検証として、RNAシークエンシング(RNA-seq)を用いたIFNα産生細胞の解析を行った。SLE患者で増加している高いIFNα産生能を有する単球は特定のサブセットであるか、RNA-seq を用いて明らかにすることを目的とした。STING刺激に対してIFNαを産生する、もしくは産生しない単球を、健常者とSLE患者からそれぞれ分離し解析を行った結果、IFNα産生能の高い単球では特定の遺伝子発現が有意に亢進していることが明らかとなった。 またオートファジー作動薬がSLE患者のpDCや単球のIFNα産生に与える影響を検証し、オートファジー作動薬であるrapamycinを使用することでSTING代謝を促進し、cGAS-STING経路下流のIFNα産生を抑制することが可能であることを示し、rapamycinがSLE単球によるIFNα産生を抑制するという観点から新規治療薬になる可能性を提示した(Rheumatology(Oxford). 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
下記①~③の項目に分けて研究計画を作成した。 ①SLE由来IFNα産生細胞の解析 ②SLE病態形成における細胞内核酸経路とIFNα産生細胞の解析 ③核酸受容体経路制御を介したIFNα産生抑制の確立 2020年度では、上記①に当たるIFNα産生細胞とSLE病態との関連性の検証として、RNAシークエンシング(RNA-seq)を用いたIFNα産生細胞の解析を行った。SLE患者で増加している高いIFNα産生能を有する単球は特定のサブセットであるか、RNA-seq を用いて明らかにすることを目的とした。STING刺激に対してIFNαを産生する、もしくは産生しない単球を、健常者とSLE患者からそれぞれ分取し解析を行った結果、IFNα産生能の高い単球ではGATA4の遺伝子発現が有意に亢進していることが明らかとなった。また上記③にあたる検証として、オートファジー作動薬であるrapamycinを使用することでcGAS-STING経路下流のIFNα産生を抑制することを示し、rapamycinがSLE単球によるIFNα産生を抑制する可能性を提示した。上記②については、コロナ禍の影響でマウスモデルを使用した実験はモデルマウスの確保困難等で十分に行うことが出来ていない。 以上から、本来予定していた実験・検証にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では、上述したRNA-seqを用いたSTING経路を介したIFNα産生単球の解析結果から、単球の特徴としてGATA4の発現に注目している。GATA4はDNA損傷シグナル伝達に応答してNFκBの活性化を介してthe senescence-associated secretory phenotypeというサイトカイン分泌様式と老化を誘導することが知られている。健常コントロールと比較してSLE単球の特徴としてGATA4発現が有意に上昇していることから、GATA4を介した変化がSLE病態形成に関与している可能性を見出した。今後はGATA4に対するsiRNAを使用しループスマウスでSLE病態が変化するか比較することでSTING経路がSLE病態形成に関わるか検証する。 また、上述したマウスモデルを使用した検証を下記2項目で行う予定である。①薬剤誘発SLE病態発症マウスモデル:STINGリガンドである2’3’-cGAMPをマウス耳に定期塗布することでSLE病態を形成するか、リガンド投与群と非投与群で生存率、自己抗体産生、腎炎などに対する効果を比較する。②SLE病態自然発症マウスモデル:MRL/lprマウスはSLE病態を自然発症するマウスであり、STINGの細胞内核酸受容体としての機能は正常であることが知られている。SLE病態形成における細胞内核酸受容体経路とIFNα産生細胞を同定するために、Cre/loxpシステムを用いて単球特異的STING欠損MRL/lprマウスを作成し、上記①同様にループス病態の変化を比較する。 以上から、今後はSLE病態に関わる単球の特徴としてGATA4発現に注目し、かつマウスモデルも使用した実験系を駆使することで、SLE病態の解明と新たなSLE治療基盤の構築を目指す。
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