2023 Fiscal Year Research-status Report
皮膚筋炎の早期標的臓器である筋膜における神経・免疫連関の解明
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20K17455
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
大藤 洋介 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (00828155)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 筋膜炎 / 無筋症性皮膚筋炎 / 抗ARS抗体陽性皮膚筋炎 / 間質性肺疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
「皮膚筋炎の筋膜炎における神経系の役割を明らかにすること」を目的として以下の研究を行った. ・筋骨格系MRIによる筋膜病変/筋肉内病変の解析 骨格筋MRIにより抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎28例の筋膜病変および筋肉内病変の有無を解析し,肺病変および間質性肺疾患の予後との関係を調べた.画像的に筋肉内病変を有するグループと,筋肉内病変を有さないグループを比較したところ,前者のグループでは間質性肺炎の程度が有意に軽く,致死率も低かった.また,筋肉内病変を示した部位の割合が高い症例ほど,間質性肺炎の肺病変の広がりが少なく,両者は有意な負の相関を示した.28例中,4例が致死的な経過を辿った.この4例はいずれも筋膜病変を有したが,筋肉内病変は見られなかった.これらの結果から,抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎では,何らかの要因により筋膜の炎症が筋肉内へ波及しない病態が,肺病変の増悪に関与していることが示唆された.骨格筋MRIにおける筋膜病変を病理学的に解析するため,en bloc biopsy法により採取した筋膜/筋肉を病理学的に解析したところ,筋膜およびそれに隣接する筋肉において,血管周囲に炎症細胞浸潤が見られた. ・免疫組織染色による患者の筋膜における神経ペプチドおよびその受容体の解析 en bloc biopsy法により皮下組織,筋膜,筋肉を一塊に採取した検体を病理学的に解析し,神経ペプチドであるcalcitonin gene-related peptide(CGRP)およびsubstance P(SP)の局在を明らかにする目的で,抗CGRP抗体,抗SP抗体による免疫組織化学染色を施行した. 以上の成果を学会および国際誌学術論文として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
en bloc biopsy法による筋生検はその病態の解析に有用な手段ではあるが,侵襲を伴う検査であり,患者の全身状態が不良である場合や同意が得られない場合には施行できない.一方筋骨格系MRIは,侵襲を伴わずに筋膜病変の評価が可能である. 本年度は,en bloc biopsy法による筋生検と並行して,筋骨格系MRIによる筋膜病変の画像的評価を主体的に行ったため,やや進歩状況が遅れた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎においては,異なる2つの臓器(肺および筋膜/筋肉)に相反する関係があることが明らかになった.一方,抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎と同様に間質性肺炎が問題となる,抗ARS抗体陽性皮膚筋炎においても,間質性肺炎の予後と皮膚筋炎の症状に関連があることが大規模コホートにより明らかとなった. そこで,今後は抗ARS抗体陽性皮膚筋炎の筋膜病変と肺病変との関連を明らかにし,これら2つの離れた臓器における神経系の役割を解明する.
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Causes of Carryover |
新規の抗体試薬などの発注を行わなかったため.
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