2023 Fiscal Year Research-status Report
新生児敗血症における発症予測因子・病原微生物同定のためのマイクロバイオーム解析
Project/Area Number |
20K17464
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
堀場 千尋 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (40844907)
|
Project Period (FY) |
2022-12-19 – 2025-03-31
|
Keywords | 新生児敗血症 / メタゲノム解析 / 次世代シークエンス / 感染症診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児感染症は重症化しやすく、敗血症に至ったとき死亡率は 13~25%と高いが、標準的な微生物検査法での病原微生物同定率が低いため診断が難しい。本研究の目的は、新生児感染症発症時に採取した臨床サンプルに対して ショットガンメタゲノム解析を行うことで、新生児感染症の病原微生物と新生児敗血症発症因子を明らかにすることである。 2021年度につづき、新生児感染症、特に呼吸障害患者の急性期より採取した血液、胃液のマイクロバイオーム解析を行なった。対象症例は30症例、呼吸障害の原因は、新生児一過性多呼吸が47%、呼吸窮迫症候群が23%であった。慢性肺疾患III型とIII'型は5例、母体の胎盤病理検査で絨毛膜羊膜炎が8例報告された。血液培養はすべて陰性で胃液培養はGBSとCandida albicansがそれぞれ1例ずつ陽性であった。血液サンプルからは新生児呼吸障害の原因となる新たな微生物は特定できなかった。胃液サンプルのマイクロバイオーム解析からは、Ureaplasma属が検出された群は母体の絨毛膜羊膜炎と関連することが明らかとなった。これまでにも別手法ではあるもののUreaplasma属と前期破水、重症慢性肺疾患、児死亡との関連の報告があり、マイクロバイオーム解析は矛盾のない結果を導いた。一方で、Ureaplasma属以外に臨床経過との関連を示唆する微生物はなかった。これらの結果より、Ureaplasma属の検索は新生児呼吸障害の早期診断や治療対象になる可能性が示唆された。新生児呼吸障害に対する臨床サンプルに対するマイクロバイオーム解析では血液より胃液のほうが検体として有用であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者の海外留学後の所属異動による研究体制の整備、新型コロナウイルス感染症流行によるサンプル収集の遅延の影響もあり進捗はやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度より小児科領域の敗血症のThe Phoenix Sepsis Scoreが運用開始された。本Scoreによって評価された重症度とマイクロバイオーム解析の関連を調査した研究は少ない。新たに臨床側の追加情報としてThe Phoenix Sepsis Scoreを使用し、引き続き症例収集を行い、本研究課題の目的である臨床サンプルに対して ショットガンメタゲノム解析を行うことで敗血症の病原微生物と新生児敗血症発症因子を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
申請者の海外における研究滞在による研究中断、帰国後の所属変更に伴い、前所属からのサンプル移動や研究体制の再整備を行ったため研究進捗がやや遅延した。そのため期間延長申請を行なった結果、次年度使用額が生じた。当初の研究計画の通り、新生児敗血症のマイクロバイオーム解析の継続に必要なシークエンス試薬、計算リソースに使用する。
|