2020 Fiscal Year Research-status Report
抗酸菌によるマクロファージの抗原提示抑制に関わるCerS2の役割
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20K17471
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
花房 慶 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (40867909)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 抗酸菌 / スフィンゴ脂質 / 極長鎖脂肪酸鎖 / 貪食能 / 抗原提示 / IFN-γ / CerS2 / Zymosan |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抗酸菌によるスフィンゴ脂質代謝を標的とした細胞内寄生・抗原提示抑制機構を明らかにすることを目的としている。我々はこれまでに抗酸菌の貪食や殺菌における好中球と極長鎖脂肪酸鎖を有するスフィンゴ脂質 (C24-スフィンゴ脂質)の関係性を明らかにしてきたが、マクロファージの機能との関係性は明らかになっていない。そこで、C24-スフィンゴ脂質を合成する酵素であるCeramide synthase 2 (CerS2)に着目して、C24-スフィンゴ脂質やその代謝産物の役割を調べることで、マクロファージによる抗酸菌の貪食や食胞成熟、抗原提示における病原性抗酸菌による細胞内寄生・抗原提示抑制機構を明らかにしようと試みている。 2020年度では、CerS2を欠損したヒト単球性白血病細胞株THP-1を用いて、貪食能の検定を行なった。一般的な貪食能を測るために、PMAによりマクロファージ様に分化したTHP-1 (PMA-THP-1)にZymosanを貪食させた。さらに、IFN-γによる活性化による貪食能の変化も解析した。その結果、CerS2を欠損させたPMA-THP-1はIFN-γによって貪食能が活性化されなくなった。CerS2もしくはC24-スフィンゴ脂質とIFN-γによる活性化の関わりを明らかにするためにタンパク質の発現解析を行なった結果、食胞成熟に関わる様なタンパク質の発現に影響が見られた。CerS2もしくはC24-スフィンゴ脂質はIFN-γの活性化や貪食能と関係していることが示唆された。現在、CerS2欠損株のIFN-γ誘導性の活性化におけるシグナル伝達等の変化を解析するために、RNA-Seqによる網羅的な解析を行っている。今後は以上で得られた知見を基に、病原性または、非病原性の抗酸菌をCerS2欠損THP-1に貪食させて、食胞成熟や抗原提示能への影響を解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍となり実際に実験に充てられる時間等に制約がでたものの、基礎的なデータの取得が進んでおり、本来の目的である病原性抗酸菌特有の細胞内寄生・抗原定時抑制機構を調べるための準備が順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度にてCerS2をゲノム編集によりノックアウトしたTHP-1にCerS2を強制発現させた細胞株が得られた。これまで使用していた細胞株も含め、IFN-γ誘導による活性化への影響を調べるためのRNA-Seqによる網羅的な解析を行う。また、IFN-γによる活性化やCerS2の欠損によって変化がみられた食胞成熟や抗原提示に関連したタンパク質群をそれぞれ、病原性または非病原性抗酸菌を貪食させた条件下でウエスタンブロッティングやフローサイトメーターにより解析する。必要であれば、食胞やオルガネラを単離することで詳細な生化学的な解析を行う。さらに、質量分析計による測定系を使用することで脂質分子の定量的な解析を行い、「病原性抗酸菌がターゲットとしている分子やスフィンゴ脂質の代謝機構は何か」について明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも費用を抑えることが可能であったことや、他予算による消耗品の購入が可能であったため次年度使用額が生じた。2021年度は、培地や検出キット、抗体のような試薬類の購入に使用する。また、学会の参加や、円滑に研究が進んだ場合は論文投稿費としても使用する。
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