2021 Fiscal Year Research-status Report
Infection research targeting experimental evolution bacteria by host interaction
Project/Area Number |
20K17475
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
鴨志田 剛 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (40707410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アシネトバクター / 人工呼吸器関連性肺炎 / 実験進化 / 線毛 / 代謝変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,世界中の医療機関で院内感染の原因菌や薬剤耐性菌として問題となるAcinetobacter bauamnnii を実験的に適応進化させることで,高病原性化した菌株を樹立する.樹立した株を解析することで A. bauamnnii 感染症の発症メカニズムや固有の病原性を明らかにすることを目的に研究を行っている. A. baumannii が起炎菌となる人工呼吸器関連性肺炎が医療現場で問題となっている.そこで人工呼吸器に使用される気管挿管チューブ (メディカルデバイス:MD) に定着しやすい菌株 (MD 適応株) および宿主肺環境に適応した株 (肺環境適応株) の樹立を試みた.具体的には,MD 存在下で A. baumannii を培養後,MD に接着した菌を回収し,再度 MD 存在下での培養を繰り返し MD 適応株を樹立した.また,肺環境適応株はマウスの気管支に菌を投与し,肺に感染定着した菌を回収した後に,再度別のマウスに菌投与を繰り返することで樹立した.R3年度は,これら MD/肺環境適応株のマウスへの病原性を解析した.いずれの適応株もマウス気管支に投与しても免疫が正常なマウスであれば一過性の肺感染を起こし,死亡することなく回復した.A. baumannii は典型的な日和見感染菌であり易感染性宿主に感染した場合,病原性を発揮し高い致死率を示す.そこで,易感染性の患者を模擬しシクロフォスファミドで処理した免疫不全マウスに投与したところ,肺炎を発症した後に敗血症を起こし96時間以内に全てのマウスが死亡した.現在,MD および肺環境適応株の病原性増加に寄与する病原因子を同定するために,プロテオミクス・ゲノミクス解析を行っている.これまでに,MD 適応株において接着に寄与する線毛変化が,MD/肺環境いずれの適応株でもアミノ酸利用能が増強することを明らかとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費申請時は,マウス個体を用いた実験進化株の樹立を計画しており,現在マウス肺環境適応株の樹立に成功し,順調に進んでいる.さらに,Acinetobacter baumannii は医療器具に定着しやすく,人工呼吸器関連性肺炎の起炎菌として問題となるため,人工呼吸器に使用される気管挿管チューブに接着しやすい実験進化株の樹立を試み,樹立に成功した.気管挿管チューブ (メディカルデバイス:MD) 適応株については,2020年度の「先進ゲノム支援」の支援を受け,ゲノミクス解析を行い病原性増強に寄与する可能性が高い遺伝子変化を明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,これまでに樹立した気管挿管チューブ (メディカルデバイス:MD) および肺環境適応 Acinetobacter bauamnnii 株の病原性評価を引き続き行う.特に,これら適応株は免疫不全マウスにおいて敗血症を引き起こすことから,その詳細な機序を解析する.さらに現在,近赤外生物発光を用いマウス肺やその他臓器の細菌感染病態を評価可能な in vivo 深部ライブイメージング法を開発している.そこで開発したイメージング法を用いて敗血症を観察・評価する.また,引き続きこれら適応株の病原性増加に寄与する因子をプロテオミクス・ゲノミクス解析で明らかにする.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,解析予定であった RNA-seq のサンプル調整が年度末にかかってしまい,外注による解析を次年度に変更したためである.肺環境適応 Acinetobacter bauamnnii 株の病原因子を明らかにするため,トランスクリプトーム変化を RNA-seq 解析することで明らかにする計画していたが,菌株の選定と病原性評価に時間を要したため,今年度中の RNA-seq 解析を断念した.すでにサンプルは調整済みであるため次年度のはじめに外注を行う予定である.
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Research Products
(6 results)