2021 Fiscal Year Research-status Report
肥満糖尿病モデルマウスにおける膵β細胞脱分化の成因とNAFLDとの膵肝連関
Project/Area Number |
20K17484
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
石田 恵美 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (80806357)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 膵β細胞機能不全 / 脂肪肝 / 主要栄養素 / RNAシークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病におけるβ細胞機能不全の一因として、近年提唱されたβ細胞脱分化は、肥満モデルマウスにおいて、食事制限等で進行阻止されることが判明している。β細胞脱分化抑制という、新たな糖尿病治療法を目指し、β細胞脱分化の分子メカニズムを解明するため、食事中の主要栄養素バランスとβ細胞脱分化の関係解明から着手した。カロリー当たりの脂質含有比を増した調整飼料(HF)と、糖質含有比を増した飼料(HC)を準備し、肥満モデルマウスのdb/dbヘテロ接合体と同じカロリー摂取になるようHF食、もしくはHC食を投与したdb/dbマウスを解析したところ、体重低下作用や耐糖能に両群の差はなかったが、HF群の方がHC群より脂肪肝およびβ細胞脱分化は改善傾向にあった。 この背景にある分子メカニズムを解明するため、RNA-seqを用いて両群の肝における遺伝子発現の網羅的解析を行った。GO解析では、HF群より、HC群において脂質代謝関連遺伝子が有意に誘導されており、qPCR法でも、SCD1、Elovl6、FABP1、HMGRなどの発現がHC群で有意に高かった。その他、HC群では肝細胞の肥大性代償を示唆する細胞増殖関連遺伝子や、酸化ストレスを示唆するグルタチオン還元酵素などが多く検出された。HF群よりHC群で低下する遺伝子では、SerpinA群が有意に多く、NAFLの進行に応じ低下するとする既報と一致した。また、糖新生の抑制を示唆するPck1の低下も認め、GO解析の結果はHC群におけるより進行した脂肪肝を反映していると考えられた。 また脂肪肝と膵β細胞機能の臓器連関を担う分子を検討するため、GLP-1やFGF21に関する解析を行ったがこれらはβ細胞脱分化には関連が低いことが判明した。このため、HF群、HC群の膵島のsingle cell seqを行い、膵側からβ細胞脱分化関連分子を検索する実験を今後計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3か年の研究計画であるが、当初予定されている研究計画のうちおよそ2/3ほどを終了した。一部の実験は研究結果に応じ継続を中止したり、実施内容を変更したりしている。
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Strategy for Future Research Activity |
過食肥満モデルマウスdb/dbにおける、主要栄養素バランスと脂肪肝の進展の関係について、HF群とHC群の肝から抽出されたRNAの次世代シークエンスによる網羅的な遺伝子発現解析の結果に応じ、特筆すべき遺伝子を抽出し、その機能を確認する実験を追加する予定である。また、HF群とHC群でβ細胞脱分化や脂肪肝に差をもたらした分子メカニズムとして、研究計画ではGLP-1とFGF21を挙げていたが、関与が少ないことを示唆する結果が得られたため、現在HF群とHC群の膵島を単離し、single cell sequenceによってβ細胞の遺伝子発現の網羅的解析を行い、変動遺伝子の抽出を計画し、共同研究者の内諾を得た。現在single cell sequence用のcDNAライブラリを得るための予備実験を行っており、最終年度中に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
いくつかの実験が当初の見積もりよりかなり安い額で実施できたこと、また研究結果に応じて実施されなかった実験があること、および新型コロナウイルスの世界的な流行で、2020年4月ごろから、国内外の学会のほとんどがweb開催となり旅費がかからなかったことなどから、当初の予定より研究費使用額が減った。次年度は、single cell sequenceにかかる費用などに、次年度使用額と、翌年分請求額を当てる予定である。
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