2020 Fiscal Year Research-status Report
CNPの発現調節機構解明による新規低身長治療の探索研究
Project/Area Number |
20K17490
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 洋平 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (30848213)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | C型Na利尿ペプチド / 低身長症 / 成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨伸長障害に起因する低身長症の新規の内科的治療標的として、C型Na利尿ペプチド(CNP)およびその受容体グアニル酸シクラーゼB(GC-B)シグナルが注目されている。我々は、CNP/GC-B経路活性化による低身長症の治療法開発の基盤構築のため、CNPの発現調節機構解明を目的としている。 CNPの転写調節機構の解明のため、CNPのフィードバック機構の解明を目的としてin vitro, in vivoでCNPの投与/添加実験を行った。この実験により、CNPは生体内の軟骨組織でのみ負のフィードバック作用を持つが、その他のCNP産生臓器ではフィードバックがないこと、細胞レベルでは軟骨細胞でもフィードバックが起こらず、このフィードバック作用には軟骨以外の組織が関与していること、さらに生体内の血中CNPには軟骨由来のものが少ないためNT-proCNPの血中度濃度はCNPの投与によりほとんど変わらないことを見出し報告した(Ueda et.al. PLoS One. 2020 Oct 1;15(10):e0240023.)。 また、CNPの転写調節領域、転写因子の特定のため、CNPのプロモーター領域をクローニングしたルシフェラーゼベクターを使用し、軟骨細胞においてCNPの転写調節を行っている部位を特定した。配列から考えらえる転写因子のノックダウンにより転写調節の変化を確認したが、CNPの転写調節を変化させる転写因子は発見できなかった。また、グルココルチコイドが軟骨細胞においてCNPの転写を抑制することを利用し、上記のルシフェラーゼベクターでCNPの転写抑制に働く領域の特定を試みたが、グルココルチコイドによるルシフェラーゼ活性の低下は見られなかった。軟骨細胞におけるCNPの転写調節はepigenomicに調節されている可能性があり、今後メチル化やアセチル化について検討を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内における血中CNP濃度の調節機構の解析のため、まずフィードバック作用についての解析を行った。マウスにおいてはNT-proCNPの測定が困難であったため野生型ラットに対してCNP投与実験を行い、CNPは生体内の軟骨組織でのみ負のフィードバック作用を持つが、その他のCNP産生臓器ではフィードバックがないこと、さらに生体内の血中CNPには軟骨由来のものが少ないためNT-proCNPの血中度濃度はCNPの投与によりほとんど変わらないことを見出した。また軟骨細胞株ATDC5およびラット胎仔長管骨成長板を用いたCNP添加実験から、生体内での軟骨組織におけるフィードバック作用は直接作用ではなく、軟骨以外の組織が関与していることも見出した。これらはPLoS One誌に報告した(PLoS One. 2020 Oct 1;15(10):e0240023.)。 CNPの転写調節領域、転写因子の特定のため、CNPのプロモーター領域をクローニングしたルシフェラーゼベクターを使用し、軟骨細胞においてCNPの転写調節を行っている部位を特定した。配列から考えらえる転写因子のノックダウンにより転写調節の変化を確認したが、CNPの転写調節を変化させる転写因子は発見できなかった。また、グルココルチコイドが軟骨細胞においてCNPの転写を抑制することを利用し、上記のルシフェラーゼベクターでCNPの転写抑制に働く領域の特定を試みたが、グルココルチコイドによるルシフェラーゼ活性の低下は見られなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
CNPのプロモーター領域をクローニングしたルシフェラーゼベクターを使用し、軟骨細胞においてCNPの転写調節を行っていると考えられる部位を特定できたものの、転写因子の特定には至らなかった。またグルココルチコイドによる軟骨細胞でのCNP転写抑制作用は、ルシフェラーゼアッセイにおいては見られなかった。これらのことから軟骨細胞におけるCNPの転写はepigeneticに調節されている可能性があると考え、今後はCNPの調節機構の解明のため軟骨細胞におけるDNAのメチル化、ヒストンのアセチル化について解析することとしている。また同じ成長因子であるGHとの関連においても、CNPの産生に主眼を置き、野生型ラットに対するGHの投与実験やGH分泌不全ラットにおける解析を予定している。
|
Causes of Carryover |
細胞を用いたCNPの転写調節領域、転写因子の解析において、CNPの転写調節を行っていると考えられる部位を特定できたものの、転写因子の特定には至らなかった。従って研究計画の修正が必要になったため、比較的安価に施行できる動物実験を当初の予定から繰り上げて行った。動物実験については当初の予定より早く学会発表、論文投稿が可能であったが、新型コロナウイルス流行により学会がwebで行われるようになったため旅費が不要になった。以上から今年度の使用額は当初の予定を下回るものとなった。来年度の予算は細胞実験や動物実験に必要となる物品・試薬の購入、細胞実験により得られた結果をもとにした遺伝子改変動物の作成、遺伝子改変動物を含む動物実験の結果解析に充てる予定である。
|
Research Products
(2 results)