2020 Fiscal Year Research-status Report
間欠絶食に伴う代謝エピゲノム連関によるミトコンドリア活性化機構のメタボローム解析
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20K17500
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
遠藤 翔 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (20772354)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂肪燃焼 / 代謝変容 / ミトコンドリア活性化 / 代謝エピゲノム連関 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
間欠絶食に伴う代謝エピゲノム連関によるミトコンドリア活性化機構のメタボローム解析 近年, 摂取カロリーの制限を伴わずして肥満・耐糖能の改善が期待できる食事療法として間欠絶食が注目されている. しかしながら, 間欠絶食が代謝改善をもたらす機構は十分知られておらず, どのような間欠絶食が効果的であるかも定かではない. 申請者はこれまでに, 1週間のうち72時間連続の絶食期間を設け, 残り96時間を自由摂食とする72時間間欠絶食マウスにおいて肥満・耐糖能が改善し, その効果が間欠絶食終了後も長期に持続することを明らかにした. また, 72時間間欠絶食後の骨格筋ではミトコンドリアが増加し, 脂肪燃焼が促進することを見出した. 本研究では72時間間欠絶食後の長期に及ぶ代謝改善効果の解明のため, ミトコンドリア活性化ならびに脂肪燃焼促進に関与する遺伝子のエピゲノムに着目した検討を行う. 栄養状態による代謝産物の変動がヒストンアセチル化を制御し, 遺伝子発現を変化させることから, 72時間間欠絶食後の臓器における代謝変容をメタボロームにて解析し, 間欠絶食に伴う代謝変容が, 筋肉や脂肪組織のエピゲノムを制御することでミトコンドリアを活性化して脂肪燃焼を促進するとの仮説を検証する. その検討を重ねることで, 間欠絶食による代謝改善の本質を究明し, 臨床応用可能な新規間欠絶食プロトコルの提案を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24時間絶食と24時間自由摂食を反復する間欠絶食で、マウスの耐糖能が改善すると報告されている。ヒトにおいてもいくつかの間欠絶食プロトコルの効果が検討され、減量ならびに耐糖能改善に有用である可能性がある. 72時間間欠絶食(72hIF)後の代謝改善効果の解明のため, ミトコンドリア活性化ならびに脂肪燃焼促進に関与する遺伝子の発現を検討する. 間欠絶食に伴う代謝変容が, 筋肉や脂肪組織のミトコンドリアを活性化して脂肪燃焼を促進する, との仮説を検証する.令和2年度の研究では, 間欠絶食による運動耐容能の改善や, 血圧への影響, また筋肉, 白色脂肪, 褐色脂肪, 肝臓, 腸管, 腎臓における組織リモデリング, ミトコンドリア活性化(定量的PCR法), また間欠絶食前後でのその時間経過を追うことで、間欠絶食が全身に与える影響を詳細に解析した. 72hIF 4サイクル終了時点で, 耐糖能に加えてトレッドミルで評価した持久力の改善を認めた. 骨格筋でのエネルギー代謝の変容に着目して間欠絶食の効果を検討したところ, IF群の骨格筋ではミトコンドリアを活性化し, 脂肪燃焼を促進する遺伝子群の発現が亢進し, ミトコンドリアが肥大していた. IF4サイクル終了後4週間自由摂食の観察期を過ぎた後も, IF群で自由摂食群と比べて有意な体重増加の抑制を認めた. 観察期終了後も, IF群で骨格筋の脂肪燃焼系遺伝子の発現亢進を認め, 耐糖能と持久力が向上した. 72hIF終了後4週間にわたり骨格筋の脂肪燃焼遺伝子群の発現が亢進しており, 72hIFに伴うミトコンドリア関連遺伝子の持続的な発現変化が体重抑制ならびに耐糖能と持久力の改善に寄与すると示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
72hIF後にこれらミトコンドリア脂肪燃焼に関与する遺伝子群の発現が亢進した. 絶食時間の長い間欠絶食が耐糖能改善, 持久力向上に効果的であり、また、間欠絶食の代謝改善効果が長期に及ぶことを裏付けた. 次年度の検討で、間欠絶食後のミトコンドリア脂肪燃焼に関与する遺伝子群の発現亢進に、エピゲノム制御が関与するかを検討する.
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