2021 Fiscal Year Research-status Report
膵β細胞における細胞内代謝変化に着目した糖尿病病態の解明
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20K17503
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野本 博司 北海道大学, 大学病院, 助教 (50862330)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞内代謝 / 糖尿病 / 膵β細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病の病態を理解するうえで、インスリンを分泌する膵β細胞の機能障害の機序を解明することは重要である。申請者らは糖尿病状態において、膵β細胞の細胞内エネルギー代謝が酸化的リン酸化から解糖系へとシフトする、細胞内代謝変化(代謝リモデリング)に着目した検討を行っている。この代謝変化には、膵島におけるHIF1αと解糖系酵素PFKFB3の発現亢進が密接に関与していることを明らかとしたが、具体的にどのようなストレス因子がこのような変化を引き起こすのかは未知の部分が多く、代謝リモデリングを予防しうるのか、可塑性があるのかは不明である。 申請者らは膵β細胞株・単離膵島を用いた解析において、高ブドウ糖環境が解糖系酵素PFKFB3の発現上昇を介した解糖系代謝への変化を惹起し、ブドウ糖濃度を低下させることによりこの変化が是正されることを見出した。更に肥満糖尿病モデル動物を用いて週数別に膵島の代謝変化を、Western Blot法ならびに膵切片の免疫染色により検討したところ、体重と血糖値の上昇とともに同様の代謝変化が進行し、体重・血糖値の抑制により部分的に是正されること、更には糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)による介入も同様に影響しうることを明らかとした。現在、網羅歴遺伝子解析により関連するパスウェイの導出を行っているところである。 さらにこのような代謝変化が実際の日本人糖尿病患者の膵島においても生じているかを、剖検膵のパラフィン包埋切片を用いて検討してきた。当初予定した症例の解析はおおむね終了し、日本人2型糖尿病では非糖尿病と比し、有意に膵β細胞のPFKFB3陽性細胞率が高いこと、このPFKFB3の変化に患者背景因子が関連することを見出している。病理学的特徴との関連性についての検討を更に進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵β細胞株・単離膵島を用いたin vitro, ex vivoの検討に加え、肥満糖尿病モデルマウスを用いたin vivoの検討を並行して行い、膵島・膵β細胞の細胞外グルコース濃度に応じた代謝変化のダイナミクスを観測しえた。基本的なデータは収集できており、肥満糖尿病モデルマウス以外の高血糖モデルや細胞実験による検証実験を行っているところである。 剖検膵を用いた検討は、主要評価項目について全症例の解析が済んでおり、現在副次的評価項目に関連する検討を追加しているところであり、予定通りの進行である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおりおおむね予定通りに進行しており、現在の解析を引き続き進めていく。細胞実験については、肥満高血糖以外のモデルを用いた解析を追加していく。さらには解糖系酵素PFKFB3の修飾が耐糖能に与える影響についての検討や、膵β細胞PFKFB3特異的遺伝子発現マウスの作成を行っていく。剖検膵を用いた検討では、膵の病理学的特性や膵β細胞機能・障害マーカーなどと細胞内代謝変化との関連を探求していく。
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