2020 Fiscal Year Annual Research Report
メラノコルチン4型受容体シグナルによる血管障害抑制機構の解明
Project/Area Number |
20K17507
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
森 健太郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (80835976)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | MC4R / マクロファージ / AAA |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、主に中枢神経系に発現し食欲抑制に関わる分子として知られてきたMC4Rが、動脈硬化や動脈瘤といった血管病変へ直接浸潤するマクロファージにも発現していることを確認済みであった。そこでマクロファージ上に発現するMC4Rシグナルが血管疾患発症においてどのような意義をもつのか検証した。 実験A 骨髄系細胞特異的MC4R回復(LysMCre(+/-);MC4RTB/TB)マウスとネガティブコントロール(LysMCre(-/-);MC4RTB/TB)マウスに対してAngIIが注入された浸透圧ポンプ(500ng/kg/min)を皮下に留置しAngII誘導性腹部大動脈瘤(AAA)を誘導したところ、前者においてAAA発生率やサイズの有意な減少を認めた。 実験B 実験Aで用いた2群のマウス骨髄より単離したマクロファージにおける炎症関連遺伝子発現量を比較したところ、前者において有意な減少を認め、さらに転写因子NFkBの活性が抑制されていた。 実験C 健常者(n=54)2型糖尿病患者(n=60)の血液サンプルより単球を培養し、MC4R遺伝子発現量および血漿α-MSH値、各動脈硬化マーカーの関連を検討したところ、健常者に対して2型糖尿病患者では有意に単球のMC4R遺伝子発現量が減少し、逆に血漿α-MSH値は上昇していた。また、2型糖尿病患者内における解析では、血漿α-MSH値と動脈硬化マーカーである頸動脈内膜中膜複合体厚、上腕足首間脈波伝搬速度が正の相関を示した。 本研究の以上の結果から、マクロファージ上のMC4Rシグナルが炎症関連遺伝子発現を抑制することで血管脆弱性に対して保護的に作用することを個体レベルで示した。今後腹部大動脈瘤や動脈硬化症に対する新たな治療戦略につながることが考えられる。
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