2020 Fiscal Year Research-status Report
TSH過剰発現マウスを用いた甲状腺機能亢進症に対する新規治療の基盤構築
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20K17508
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山内 一郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (20844715)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 甲状腺機能亢進症 / バセドウ病 / モデルマウス / 甲状腺刺激ホルモン / 抗甲状腺薬 / チアマゾール |
Outline of Annual Research Achievements |
甲状腺機能亢進症は、甲状腺におけるホルモン合成が亢進し、過剰に血中に分泌された甲状腺ホルモンにより様々な自覚症状や代謝異常をきたす疾患である。治療は抗甲状腺薬に代表される薬物療法、放射性ヨウ素内用療法、手術療法があるが、数十年にわたり大きな変化がない。本邦では、抗甲状腺薬が第一選択となっているが、問題点として種々の副作用がある。本研究課題では、甲状腺機能亢進症の新たな治療薬を開発するための標的を探索し、今後の研究の基盤を構築することを目的としている。 甲状腺機能亢進症はバセドウ病に代表されるように、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体が刺激され、甲状腺におけるホルモン合成が促進する。我々はTSHを過剰発現することに基づく新たな甲状腺機能亢進症モデルマウスを開発することに成功した。長らく不明であったTSH受容体活性化による分子レベルの変化、抗甲状腺薬の作用点の同定を目指し、このモデルマウスへの抗甲状腺薬投与実験を開始した。 現在までに、コントロールマウス、モデルマウスそれぞれに抗甲状腺薬であるチアマゾールを投与し、甲状腺ホルモン血中濃度の測定を行い、抗甲状腺薬の至適濃度の設定を完了した。具体的には、モデルマウスの甲状腺ホルモン血中濃度を抗甲状腺薬投与によりコントロールマウスと同程度にすることができた。 既にこれらの実験から得られたサンプルの網羅的解析を開始しており、得られた知見を踏まえて、研究を展開していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、モデルマウスのフェノタイプおよびモデルマウスへの処置による影響を検証するにあたり、至適条件の設定が重要である。現在までにこの条件設定を完了し、実際に解析に用いるサンプルの回収を終えている。また網羅的解析についても既に外部機関へ依頼しており、初年度に設定していた計画を順調に終えることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的解析結果をもとに、重要な分子あるいは経路を絞り込む。その治療標的としての妥当性を検証する上では、標的遺伝子のノックダウンや阻害剤による検討を行いたいが、甲状腺領域においてはホルモン産生能を有する細胞株が乏しく、in vitroでは実験系を組むことが困難と想定される。候補分子のノックアウトマウスに対し甲状腺機能亢進症を惹起して、変化を野生型マウスと比較する、あるいは候補分子に関する化合物スクリーニングを行い、リード化合物を得てモデルマウスへの投与実験を行うことを考えている。
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Causes of Carryover |
網羅的解析について外部機関に委託しているが、納品が次年度になるため、計上した。
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