2021 Fiscal Year Research-status Report
内分泌機能異常を伴うIgG4 関連疾患における小胞体ストレスの役割と治療法の検討
Project/Area Number |
20K17518
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
竹島 健 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40647517)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | IgG4関連疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、IgG4関連疾患に伴う内分泌異常(下垂体病変、甲状腺病変、膵内分泌異常)についてステロイド治療前後で検討を行ってきた。この中で、糖尿病を合併したIgG4関連膵疾患(自己免疫性膵炎)患者では、ステロイド治療によりインスリン分泌やグルカゴン分泌が改善する可能性を報告してきた(Diabetes Ther 2018)。一方、ステロイド治療によるインスリン抵抗性悪化に伴い糖尿病を発症する症例も散見される。そこで本研究では、ステロイド治療に代わる新たな治療選択として小胞体ストレス減弱作用をもつキナーゼ阻害薬(KIRA)に着目した。 小胞体ストレスは、飢餓、低酸素、変異蛋白質、ウイルス感染などの負荷により、正しく折りたたまれなかった不良蛋白質が小胞体内に蓄積することでおこり、内分泌異常や自己免疫疾患への関与が報告されている。糖尿病では、膵β細胞における小胞体ストレスの蓄積がアポトーシスを引き起こし、β細胞機能障害を引き起こすことが報告されている(Science 2004)。甲状腺においても、小胞体ストレスが甲状腺ホルモン産生を低下させることが報告されている(JCEM 2011)。近年、小胞体ストレス減弱作用をもつキナーゼ阻害薬(KIRA; kinase-/inhibitory RNase attenuators)により、1型糖尿病モデルマウスでβ細胞アポトーシスが減少し、β細胞機能が温存されることがて報告し注目されている(Cell Metabolism 2017)。 研究代表者は、患者血清由来IgGおよびLaminin511を用いてIgG4関連疾患モデルの作成を試み、IgG4 関連疾患に伴う内分泌機能異常における小胞体ストレスの影響を検討している。加えて、小胞体ストレスを減弱させるKIRAを用いて、IgG4 関連疾患の内分泌異常を改善させるかを検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IgG4関連疾患患者の内分泌機能異常を検討するため、「IgG4関連疾患における内分泌異常の病態解明と治療反応性予測因子に関する前向きコホート研究(受付番号2115)」として倫理委員会の承認を得、IgG4関連疾患患者の登録を開始している。2022年5月現在、疑い症例を含め12症例を登録し、ステロイド治療前、治療後1か月、維持期で各々血液サンプルの採取を開始している。また、IgG4関連疾患モデル動物検討のため「IgG4関連疾患における内分泌異常の病態解明に関する研究(受付番号973)」の動物実験申請を行い、倫理委員会の承認を得ている。ステロイド治療前の患者血清由来IgGを血清からの単離・精製し、新生児マウスへの投与を行い、膵、下垂体、甲状腺病変の病理組織学的解析を行っている。加えて、IgG対応抗原として新たに報告されたLaminin511を用いたモデルマウスの作成も試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
「IgG4関連疾患における内分泌異常の病態解明と治療反応性予測因子に関する前向きコホート研究(受付番号2115)」として倫理委員会の承認を得、IgG4関連疾患患者の登録を開始しており、更なる症例の蓄積を図っていく。 患者血清IgGsを用いたIgG4関連疾患モデルマウスの作成においては、新生児マウスの膵において既報と同様に膵腺房周囲にヒトIgGの沈着を認める病変が確認された。一方、ステロイド治療前の患者血清を用いるため、モデルマウスを恒常的に作成していくためには量的な限界がある。また、新生児マウスでは臓器が非常に小さく臓器別解析に難を要する。そこで、IgG4関連疾患患者の血清IgGを用いた検討により新たな対応抗原として報告されたLaminin511を12週令マウスに投与し、小胞体ストレス評価のための新たなIgG4関連疾患モデルにおける内分泌異常の検討も考慮している。
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Causes of Carryover |
想定より試薬が安く変えたため残額が生じた。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Nobuyuki Nishi, Ken Takeshima, Shuhei Morita, Hiroshi Iwakura, Masahiro Nishi, Takaaki Matsuoka2021
Author(s)
Nobuyuki Nishi, Ken Takeshima, Shuhei Morita, Hiroshi Iwakura, Masahiro Nishi, Takaaki Matsuoka
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Journal Title
Endocrinol Diabetes Metab Case Rep
Volume: 2021
Pages: 21-0029
DOI
Peer Reviewed / Open Access