2020 Fiscal Year Research-status Report
Cell Therapy Development for Congenital Metabolic Diseases Using Human Amniotic Epithelial Cells
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20K17522
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高野 智圭 日本大学, 医学部, 助教 (50845310)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒト羊膜上皮細胞 / 多能性幹細胞 / 上皮間葉転換 / 先天性代謝異常症 / TGF-β / SB-431542 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該施設における倫理委員会承認のもと、対象となる妊婦から書面の同意を得て、胎盤からヒト羊膜上皮細胞(human amniotic epithelial cells: hAEC)を分離・保存した。hAECがin vitro培養下で、継代を経るごとに上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transition: EMT)を起こすことを、形態学的およびRT-qPCRによるmRNA発現解析によって確認した。次にEMT誘導因子であるTGF-β、およびTGF-βのType Iレセプター(ALK5)選択的阻害剤であるSB-431542を用いて細胞を培養した。細胞を短期間(day1, day4, day7)で経時的にサンプリングし、培養開始前の細胞(day0)を含めてmRNA発現解析を行ったところ、代表的なEMTマーカーであるSNAILはday1で最も高く発現し、hAECはプラスチック皿で培養を開始された直後から、上皮系マーカーを失い、間葉系マーカーを発現することが示された。この変化はTGF-β添加により促進したが、SB-431542を用いることにより抑制されることを確認した。培養開始7日目になると、SB-431542を添加したhAECは非添加群と比較し、形態学的にも遺伝学的にも大きく異なる均一な細胞集団となることが判明したため、SB-431542添加群および非添加群に対し、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を施行した。差異遺伝子発現解析によって上皮形態を保ったhAECにおいて高く発現する遺伝子を見出すことが出来た。またGene Set Enrichment AnalysisによりSB-431542添加によってhAECは未分化なキャラクターを保持し、一方SB-431542非添加でEMTを起こしたhAECは三胚葉それぞれに分化が進んでいることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は15例の胎盤からhAECを分離した。プロトコルの検討を重ね、viabilityの高い細胞を多量に保存出来るよう細部の調整を行うことができた。また当初の計画通り、in vitroで培養したhAECにおける経時的なEMT変化を評価することが出来た。細胞播種密度や、SB-431542の添加濃度を調整し、NANOGなどの多能性マーカーを最も高く保持する培養条件を見出すことが出来たため、研究期間の後半に行う予定であったRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を早めて施行した。Gene Set Enrichment Analysisにより、上皮形態を保ったhAECと紡錘状変化を起こしたhAECの包括的なmRNA発現を把握することが出来た。以上の結果を含む内容で特許を出願した(未公開)。さらに令和3年度に予定しているPhoenixBio社との共同研究に向け、予備実験としてcDNA-uPA/SCIDマウスにhAEC移植を1回施行した。したがって、研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqによるトランスクリプトーム解析で得られた結果をもとに、SB-431542添加群と非添加群における差異遺伝子について考察を深める。培養前の細胞(day0)も含め、RT-qPCRによるmRNA発現比較解析を行う予定である。RNA-seqは2群間3検体ずつ(n=6)で行ったが、個体間のバラつきを軽減するために、RT-qPCRによる評価の際にはさらに検体数を増やして行う必要があると考えている。またEMT促進因子は数多く存在するが、今回はTGF-β経路の阻害薬を使用して検討を行ったため、western blotによる蛋白発現解析を追加し、smad pathwayのリン酸化について評価する。これによりhAECの形態変化と多能性もしくはlineage-commitmentとの関係性の一端を見出せる可能性がある。 COVID-19感染拡大により施設間の行き来が困難である際は、令和3年度に予定しているPhoenixBio社との共同研究を翌年に延期し、令和4年度に予定している細胞の造腫瘍試験を先に行う可能性がある。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大により、産婦人科病棟への立ち入りを控え、胎盤採取が十分に出来ない時期があった。また、学会の現地参加や共同研究先への訪問が不可能であり、一部予定していた購入品を翌年度に繰り越した。次年度は計画している分に加え、EMTおよび多能性に関わるシグナル経路を評価するため、western blot用の抗体や試薬を購入する。
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