2021 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺ホルモン結合蛋白(CRYM)欠損における肥満及びPPARγ上昇と機序の解明
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20K17529
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大久保 洋輔 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (70793925)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肥満 / 甲状腺ホルモン / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
CRYMの欠損マウスが高脂肪食で体重増加する機序の解明として、高脂肪食摂取下で肝臓の遺伝子発現がどのように変化するかをマイクロアレイで確認したが明らかな因子を指摘できなかった。そのため、CRYMが甲状腺ホルモンに結合するタンパクであることから、甲状腺機能低下、甲状腺機能亢進による条件で再度検証することとした。実験は抗甲状腺薬によって甲状腺機能を低下させたマウス、甲状腺ホルモン(T3)を腹腔内投与することで甲状腺機能を亢進させたマウスを作成して行った。甲状腺機能低下、亢進の両条件下でCRYM欠損マウスと野生型マウスの体重に差は認めなかった。しかし、体組成評価においてどちらの条件においてもCRYM欠損マウスが白色脂肪重量の有意な増加を認めた。このことは甲状腺ホルモンの上下にかかわらずCRYM欠損が脂肪蓄積に働くことを示した。 また、野生型マウスにおいて甲状腺機能低下、亢進に対して代謝に関連する肝臓や脂肪組織のCRYM遺伝子の発現量は低下状態で差はなく、亢進状態でわずかに低下を認めるに過ぎなかった。合わせて行った甲状腺ホルモンを調整する部位である視床下部の評価では機能低下状態でCRYM遺伝子発現量が約600倍程度の有意な上昇がみられたことから、甲状腺ホルモンに対するCRYMの動きは部位によって異なり、代謝に関連する肝臓や脂肪ではCRYMの発現は甲状腺ホルモンを調整する視床下部に比べて甲状腺ホルモンの影響が少ないことを示した。 以上より、CRYM欠損マウスが甲状腺ホルモンとは無関係に脂肪蓄積をきたした。また、代謝にかかわる肝臓や脂肪組織でのCRYM遺伝子の発現は、甲状腺ホルモンによる影響を受けにくい傾向にあったこととあわせて、CRYMは甲状腺ホルモンとは無関係の働きとして肥満に関連する機序を有することが強く示唆される結果であった。
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