2020 Fiscal Year Research-status Report
シングルセルATAC-seqと膵切除モデルを用いた増殖膵β細胞のエピゲノム解析
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20K17531
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
龍岡 久登 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (70850981)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | β細胞 / 増殖 / シングルセルRNAシークエンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
若齢(8週齢)及び高齢(1年齢)のC57BL/6マウスを用いて、膵β細胞増殖を誘導する膵部分切除(PPTx)を行った。術後2日で膵島を単離し、膵島全体のRNAシークエンシング(RNA-seq)および、膵島単離後に単細胞化した後にRNA抽出を行うシングルセルRNAシークエンシング(scRNA-seq)を行い解析した。 RNA-seqの結果では、PPTxにより若齢マウスでは693の発現上昇遺伝子および573の発現低下遺伝子を認めた一方で、高齢マウスでは52の発現上昇遺伝子と31の発現低下遺伝子を認めた。これらの発現変動遺伝子をGene Ontology解析にて生物学的機能で分類すると、若齢マウスでは細胞周期や有糸分裂等に関連した遺伝子群の発現が亢進していたのに対し、高齢マウスでは炎症反応や免疫反応に関連した遺伝子群が上昇していた。この結果から、PPTxにより若齢マウスで膵β細胞増殖が活発になっていることが示唆された。scRNA-seqでは、1623細胞の遺伝子プロファイルを検出し、遺伝子発現パターンからクラスタリング行ったところ、6つの細胞亜集団(クラスター)が観察され、各クラスターごとの遺伝子発現プロファイルを詳細に解析したところ、増殖する前段階にて小胞体ストレスに関連する遺伝子の発現上昇を認めた。また増殖細胞に特に強く発現する遺伝子を同定し、この内容をiScience誌に報告した。(iScience. 2020 Nov 6;23(12):101774) 現在術後2日目の単離膵島に対してATAC-seqによるオープンクロマチン領域の検索を行い、若齢、高齢マウスそれぞれでPPTx群に特異的なオープンクロマチン領域の同定を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シングルセルRNAシークエンシングによる詳細な解析を行い、増殖と小胞体ストレスに関する時系列解析、さらに増殖細胞に特に強く発現する遺伝子を同定し、この内容を学術誌に報告することができた。 エピゲノムの解析についてATAC-Seq、あるいはシングルセルATAC-Seqに関してはコロナ禍の影響による動物を用いた実験の制限などもあり未だ条件検討を含めた試行錯誤が必要であり、まだ有用なデータは得られていないが一定の成果は得られており概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず増殖細胞で特に強く発現を認めたいくつかの遺伝子の欠損マウスを用いて、これらの遺伝子が増殖に影響を与えるメカニズムを探求する。 また、小胞体ストレスがβ細胞増殖に与えるメカニズムを探るべく、小胞体ストレスを誘導したときのβ細胞増殖動態および、小胞体ストレスに関連する遺伝子の欠損マウスを入手しておりそちらの解析も行う。 ATAC-Seqの条件検討が終了すれば、若年、加齢マウスにおけるオープンクロマチン領域に関する比較を行う予定である。
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