2020 Fiscal Year Research-status Report
プロラクチン産生下垂体腺腫における腫瘍発生・増殖を担う新規遺伝子の同定
Project/Area Number |
20K17544
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
服部 裕次郎 日本医科大学, 医学部, 講師 (40528436)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロラクチン産生下垂体腺腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではプロラクチン産生下垂体腺腫(PRLoma)の発生に関する特異的な遺伝子の解明を行い、腫瘍発生メカニズムの解明ならびに新規薬剤治療法の開発の基礎となす知見を得ることを目的としている。そのためには研究試料として、ヒトPRLomaの検体ならびに、対照群としてヒト正常下垂体が必要である。ただし、PRLomaに対する第一選択はドパミン作動薬による薬物療法であり、手術に至る症例は少ないため検体入手は容易ではない。また、正常下垂体に関しては、正常下垂体より深部に発生した腫瘍に対してアプローチするためにやむなく正常下垂体を半分のみ切除(これによる機能低下は認めないとされる)せざるを得なかった症例に限るため、同じく検体入手は容易ではない。しかしながら、申請者の2017-2019年度の科研費課題(課題番号17K16171)の過程で数例はすでに入手していたため、2020年度に新規入手できた検体と合わせ、これまでにPRLoma群、正常下垂体群とも3例以上に達したため、次世代シーケンサーによる遺伝子の網羅的解析を試みた。結果は現在解析中である。 また、本研究で用いる研究手法として、手術検体からtotal RNAを抽出し、逆転写反応を行いcDNAを合成しデジタルPCR法を用いて遺伝子発現量を定量するものがあるが、これに関する実験手法に関しては申請者の2017-2019年度の科研費課題で遂行しており、それを英文論文にまとめ投稿し、2020年度内にLife Sciences誌、Data in Brief誌に受理、公表された。 また、PRLomaはエストロゲン依存的に増殖するとされており、今後の研究準備のためラットエストロゲン受容体βに対する免疫染色方法の最適化条件を調べ、複数の学会で結果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(令和2年度)は研究遂行に必要な手術検体の採取およびRNA抽出・次世代シーケンサー解析までを目標としていたため、おおむね順調に遂行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサー解析によりプロラクチン産生下垂体腺腫(PRLoma)に特徴的な遺伝子の候補を絞り、まずはその遺伝子に関する情報を調べる。解析にかけず一部保存した残存Total RNAに対して逆転写反応を行い、cDNAを作成、候補遺伝子に対する特異的プライマー・プローブを設計し、デジタルPCR法による遺伝子定量を行う。候補遺伝子発現タンパク質を免疫組織学的手法を用いて確認する。その候補遺伝子がヒト特有のものであるならば、そこまででいったん研究をまとめることも考慮する。ラットやマウスに相同性があるならば、その遺伝子の発現ベクターを作成し、ラットPRLoma細胞株への導入により増殖能の変化を調べる。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症のため、緊急事態宣言により研究室への出入りが制限されたこと、PCR関連物品の入荷が滞ったこと、などにより、予定していた金額を使う状況には至らなかった。 今後の使用計画としては、次世代シーケンサーにより得られた結果の解析用コンピュータ購入、PCRや細胞培養に関する物品購入などに使用する予定である。
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