2021 Fiscal Year Research-status Report
無虚血肝移植術と持続的常温機械灌流の併用による胆管保護法の開発
Project/Area Number |
20K17546
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤好 真人 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (90844720)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 無虚血肝移植 / 機械灌流 / 肝移植 / 虚血再灌流傷害 / 胆管傷害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題である無虚血肝移植は、ドナーからの臓器摘出の際に、ドナー肝臓の血流遮断に先行して吻合部より肝臓側で門脈および肝動脈にカテーテルを挿入し、血流遮断と同時に機械灌流を開始し、体外保存およびレシピエント体内での血管再建の間も機械灌流を継続し、レシピエント血流再開と同時に機械灌流を停止することにより、グラフトの虚血期間をなくす肝移植術式である。本研究ではこの術式をラットで再現し、すでに生存例を得ており、2021年度はこのモデルの実験系としての安定化を図るため、トラブルシューティングを進めてきた。そのうち最も重要な課題は良好な静脈アウトフローの維持であり、ごく軽度なアウトフローブロックであってもグラフトの高度な浮腫につながりグラフト不全が発生した。良好な静脈ドレナージ経路をグラフトの移動および手術操作を通して維持するのは非常に難しい課題である。そのため、我々は、まず造影CTを用いてラット肝臓の肝静脈解剖を詳細に検討するところから開始した。ラット肝臓は分葉が強く可動性が高いため、容易に静脈が屈曲しアウトフローブロックが生じる。造影CTの解析によるラットの肝静脈解剖に基づいた術式を改善し、さらにその術式に適したカテーテル形状などを改良しドナー肝臓の機械灌流の安全性を向上させた。これにより、機械灌流により生じるグラフト浮腫や手術操作中の灌流圧上昇などの有害事象の発生率を低下させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究における主要実験系であるラット無虚血肝移植モデルはこれまでに報告のない新規実験系であり、手術操作、灌流操作とも技術的難易度が非常に高く、生存例を得た後も、実験モデルとしての安定化のためには多くの修正を要している。特に前述のように手術や機械灌流下のグラフトの移動などの捜査において静脈流出路の閉塞によるアウトフローブロックを生じないようにすることは手術術式や灌流プロトコルの最適化から灌流装置やカテーテルといったデバイスの開発に至るまで非常に広範な改良を要している。本研究は特に肝移植におけるグラフト傷害の改善を評価する実験系であるため、移植手術によってグラフトにかかるストレスを均一化することが求められるため、ラットにおける無虚血肝移植という極めて技術的要求の高い実験系の確立に加え、そこにおける高いレベルでのモデルの安定性の実現が要求される。そのため、実験系の確立に予定より時間を要しているため、実験計画の遂行に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で用いるラット無虚血肝移植モデルは前述のように、確立するのが非常に難しいが、これまでの研究におけるトラブルシューティングの積み重ねにより安定性は着実に向上してきており、特に2021年度に取り組んだアウトフローブロックの予防により、浮腫によるグラフト傷害は大幅に改善した。2022年度はデバイス、特に灌流圧のモニタリング法の最適化を行い、灌流パラメータの測定の安定化やそのほかいくつかの残された問題点をクリアする。その後、集中的に本実験のためのモデル作成を行い、胆道傷害の評価を行う。
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Causes of Carryover |
実験系の構築に時間を要しているため、助成金の主たる使用段階である本実験にまだ進めていないため。
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