2020 Fiscal Year Research-status Report
小児固形腫瘍の初代培養方法の確立と臨床応用に向けた開発研究
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20K17551
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塚田 遼 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70838747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小児固形腫瘍 / 薬剤感受性 / 成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに提供された小児固形腫瘍検体は共同研究機関からの検体も含めて25検体となり、その内訳は神経芽腫群腫瘍16検体、肝芽腫4検体、腎芽腫3検体、奇形腫1検体、腎ラブドイド腫瘍1検体、横紋筋肉腫1検体である。そのうち一般的に初代培養細胞の樹立の目安となる2継代以上の継代が可能であったものは、神経芽腫群腫瘍4検体、肝芽腫0検体、腎芽腫2検体、奇形腫1検体、腎ラブドイド腫瘍1検体であった。さらに薬剤感受性試験を行ったものは腎芽腫1例、腎ラブドイド腫瘍1例であった。 培地は、共同研究機関で作成された特殊なマテリアル(特許取得済み)を使用しており、2継代以上の継代を可能にさせるには、いくつかの腫瘍ではさらに成長因子が必要であることが分かった。神経芽腫には、成長因子のXとYの2種類の成長因子をマテリアルに添加することで、2継代以上の継代が可能になった。他の腫瘍に関しても、必要な成長因子について探索する予定にしている。 薬剤感受性試験を行った2例の検体は、2継代以上の継代が可能であり、かつ薬剤感受性試験を行うための十分な細胞数が得られたものである。腎芽腫の初代培養細胞にアクチノマイシンDとビンクリスチンをそれぞれ単剤で投与しWSTアッセイで評価したところ、濃度依存性に細胞死が増加することが確認された。臨床経過との相関に関しては、この症例は化学療法を実施せずに全摘されており評価はできていない。腎ラブドイド腫瘍の初代培養細胞には、小児で使用されている抗がん剤および成人で使用されている抗がん剤を複数ピックアップし投与を行った。評価はincucyteを用いて行ったところ、興味深いことにこれまでラブドイド腫瘍では使用されていない抗がん剤で、濃度依存性に細胞死が確認された。臨床との相関に関してはまだ治療中で確認できていない。今後もさらに薬剤感受性試験を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで小児固形腫瘍検体の得られる機会は想定よりも少なかった。また腫瘍の種類が多様であり、それぞれの腫瘍に対してマテリアルの調整に時間を要した。また腫瘍は、採取する箇所によってはがんの性質が異なっていることや、化学療法後であれば、壊死や出血していることがあり、必ずしも培養に適した状態で検体が得られるわけではないことも難渋した点である。マウスへの細胞移植を行っているが生着には至っていない。細胞の移植部位を変更することで、今年度中に必ず生着を目指して病理学的検査による評価も行いたい。 しかし、そのような中でも薬剤感受性試験にまで至ったケースがあったことは評価できる点と考えている。研究手技の無駄を省き、効率を上げることで、腫瘍検体を入手してすぐに必要な実験を行うことができるように貴重な機会を生かしていく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
小児固形腫瘍の初代培養細胞の作成手技は研究開始当初と比較すると精度があがっており、少しでも樹立成功率を上昇させていきたい。そのためには、できるだけフレッシュなマテリアルを使用することが特に重要と考えている。これまでの研究で小児固形腫瘍が得られる頻度がかなり少ないことから、待っている間に作成しているマテリアルが古くなることケースが多く、細胞が継代できない要因になっていた。できるだけ、作成したマテリアルが無駄にならないように、効率良くかつフレッシュなマテリアルを使用していく。また凍結保存も同時にすすめていく必要があり、いくつか細胞を凍結したが、凍結を行うことで細胞が起きなくなるケースもみられた。Mr.Frostyを使用した緩徐凍結を行うこと、また1か月以内に液体窒素保存を必ず行う予定にしている。 また現時点では、継代を重ねていくと細胞数が減っていくため、細胞数がある段階で、薬剤感受性試験を行う必要があるため、あらかじめ使用する抗がん剤を準備して、すぐ投与できるようにしなければならない。どの抗がん剤をどの濃度で使用するかを検討して、若い継代時に試験を行えるようにする。さらに小児がんに使用される抗がん剤は3剤以上の併用も稀ではない。Vitroで3剤以上の併用を行う方法、評価方法を検討する必要がある。 マウスへの細胞移植については、皮下移植を数回試みたが、生着には至っていない。腎被膜下への移植など移植部位を変更し、生着を目指していく。生着した場合は、病理組織の評価を行い、患者腫瘍検体との類似性、相違点を検索する予定である。
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Causes of Carryover |
動物実験が遅延しているため、次年度の実験を優先し使用を保留した。 当初の予定に追いつくために使用する予定である。
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