2021 Fiscal Year Research-status Report
肝芽腫の新規標的ADAM32の制御とPrecision Medicineへの応用
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20K17554
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
深澤 賢宏 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 研究員 (80734285)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ADAM32 / RNA修飾 / m6A / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ADAMファミリーは、様々なヒトがん腫において発現変動が報告されており、ADAMの機能を阻害することで、制がん効果が期待できるという報告がある。これまでに、我々は患者検体の解析から、肝芽腫において特異的に発現亢進する分子としてADAM32を見出し、肝芽腫細胞株を用いて細胞機能を解析した所、がん遺伝子としての役割を持っていることを明かにしました。従って、ADAM32の発現や作用を制御することにより、肝芽腫の進展を制御できる可能性が考えられます。一方、ADAMを標的とした阻害剤は生理的な機能にも広汎にわたり影響してしまうことが考えられます。そこで、ADAM32の発現機構や機能の詳細を解明して特異的な作用点を見出し、ADAM32発現や機能を制御することを目的に本研究を開始しました。肝芽腫のような固形がんの微小環境である低酸素に着目して、ADAM32の発現制御機構について解析を進めました。肝芽腫細胞株HepG2を1%O2に48時間曝露させた所、発現が高くなることが分かりました。プロモーターレポーターによる解析で通常酸素群と低酸素群の間に差がみられなかったことから、mRNAの発現制御の機構としてRNA修飾の中でもm6Aメチル化に着目して解析を進めました。m6Aメチル化関連分子であるIGF2BP2が低酸素下におけるADAM32発現亢進に重要な役割があることを見出しました。次年度は、IGF2BP2によるADAM32発現制御の詳細を検討していく予定です。また、公共データーベースの解析から、ADAM32の発現を制御する可能性のある化合物を見出しました。これら化合物の肝芽腫に対する制がん効果の検討を行っていく予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、新型コロナ感染症の拡大に伴い、研究実施が制限されて新たな研究課題に取り組むことができなかたったため、計画全体に遅れが生じています。初年度に、低酸素におけるADAM32発現亢進のメカニズムとしてm6Aメチル化が関与している可能性を見出しました。昨年度は、このメカニズムの詳細を解析し、肝芽腫におけるADAM32の遺伝子発現にはm6A関連分子であるIGF2BP2が重要な働きをしていることを見出しました。次年度は、これらのメカニズムの詳細を明らかにして、ADAM32の発現制御の可能性の検討を行っていく予定です。また、公共データーベースを用いてADAM32の発現を制御する可能性のある化合物の探索を行った所、いくつかの候補を発見しました。これら化合物の肝芽腫に対する制がん作用の検討を行う予定です。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、低酸素によるADAM32 mRNA発現上昇には、IGF2BP2が重要な役割をしていることを見出しました。IGF2BP2によるADAM32発現制御の詳細を、細胞生物学的解析、生化学的解析、網羅的遺伝子発現解析により検討していきます。また、公共データーベースを用いてADAM32の発現を制御する可能性のある化合物の探索を行い、いくつか候補を発見しました。次年度は、これら化合物を肝芽腫細胞株に作用させて、ADAM32の機能である抗アポトーシス作用や上皮間葉転換などの制御の可能性を細胞生物学的解析、生化学的解析により検討していきます。そして、肝芽腫に対し制がん作用を持つ化合物の絞り込みを行っていきます。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大による研究遅延のため次年度使用額が生じました。令和4年度の予算と合わせて細胞生物学的実験、生化学的実験の試薬、消耗品購入、研究発表に使用する予定です。
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